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その他アミノ酸 ~必須アミノ酸 メチオニン、リジン、スレオニン~

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掲載日:2019.05.09
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これまでに紹介してこなかった必須アミノ酸について解説しましょう。まずは必須アミノ酸のメチオニンです。

メチオニン

メチオニンはシステインと同じように「硫黄」を含むため、「含硫アミノ酸」と呼ばれます。また前編で紹介した通り、「開始アミノ酸」でもあります。
メチオニンは体内でシステインになるほか、カルニチンやタウリンを合成するのにも必要となります。

メチオニンは「抗脂肪肝栄養素」でもあり、肝臓に脂肪が蓄積するのを防ぎます(※119)。

またアセトアミノフェン中毒による肝障害の予防にも役立つようです。(※120)

ここでは詳しく言及しませんが、メチオニンのもっとも重要な機能は「メチル化」です。
メチル化というのは様々な物質にメチル基を提供するということで、アミノ酸やDNA、RNAなどをメチル化することは体内の代謝において非常に重要な役割を果たします。メチオニンはSアデノシルメチオニン(SAMe)となることで、メチル基供与体(メチルドナー)となります。

リジン

次にリジンです。
必須アミノ酸のリジンですが、米に不足することが一時問題となり、学校給食の米にリジンを添加しようとする動きがありました。

またそれに反対する市民運動もあり、結局リジンの添加はお流れになったようです。リジンはヘルペスウィルスの増殖を抑制することが知られており(※121,※122)、この目的では一回1gのリジンを一日3回飲むことが推奨されています。

なお少量ですが、8週間のリジン摂取により筋力が増加したという報告もあります。(※123)

スレオニン

最後の必須アミノ酸、スレオニンです。
なおこれはトレオニンと呼ばれることもあります。

これはピルビン酸やαケト酪酸になってスクシニルCoAとなり、TCAサイクルに入るほか、体内におけるリン酸化や糖鎖の結合において重要な役割を果たしています。
※119: Free methionine supplementation limits alcohol-induced liver damage in rats. Alcohol Clin Exp Res. 1998 Apr; 22( 2): 352-8.

※120: Treatment of acetaminophen poisoning. The use of oral methionine. Arch Intern Med. 1981 Feb 23; 141( 3 Spec No): 394-6.

※121: Success of L-lysine therapy in frequently recurrent herpes simplex infection. Treatment and prophylaxis. Dermatologica. 1987; 175( 4): 183-90.

※122: Effect of L-lysine monohydrochloride on cutaneous herpes simplex virus in the guinea pig. J Med Virol. 1989 May; 28( 1): 16-20.

※123: The effect of a controlled 8-week metabolic ward based lysine supplementation on muscle function, insulin sensitivity and leucine kinetics in young men. Clin Nutr. 2012 Dec; 31( 6): 903-10. doi: 10. 1016/ j. clnu. 2012. 03. 008. Epub 2012 Apr 22.
  • 山本 義徳(やまもと よしのり)
    1969年3月25日生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。
    ◆著書
    ・体脂肪を減らして筋肉をつけるトレーニング(永岡書店)
    ・「腹」を鍛えると(辰巳出版)
    ・サプリメント百科事典(辰巳出版)
    ・かっこいいカラダ(ベースボール出版)
    など30冊以上

    ◆指導実績
    ・鹿島建設(アメフトXリーグ日本一となる)
    ・五洋建設(アメフトXリーグ昇格)
    ・ニコラス・ペタス(極真空手世界大会5位)
    ・ディーン元気(やり投げ、オリンピック日本代表)
    ・清水隆行(野球、セリーグ最多安打タイ記録)
    その他ダルビッシュ有(野球)、松坂大輔(野球)、皆川賢太郎(アルペンスキー)、CIMA(プロレス)などを指導。

  • アスリートのための最新栄養学(上)
    2017年9月9日初発行
    著者:山本 義徳


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