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カリウムの摂取量は?

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掲載日:2020.06.18
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ナトリウムについては(※4)や(※6)の報告から考えて、一日に最低でも3000mgは必要になりそうです。
3000mgといえば食塩として7.6gくらい。そして前述のとおり、日本人の平均食塩摂取量は9~11gくらいです。

2014年の論文では、ナトリウム排泄量が一日7000mg(食塩換算17.8g)を超えると、心臓血管系疾患のリスクが15%高くなっています。しかし逆にナトリウム排泄量が一日3000mg(食塩換算7.6g)より少ない場合、心臓血管系疾患のリスクが27%増加しているのです。(※14)

となると日本人の食塩平均摂取量が9~11gということは、実は「ちょうど良い」のだと言えそうです。そして運動をして汗を良くかいている人は、それに応じて食塩摂取量を増やしてもまったく構いません。

日本体育協会の指針では、熱中症予防のために100mlあたり0.1%~0.2%の食塩を含んだドリンクを飲むことを推奨しています。これはナトリウムとして40~80mgですので、運動中に1リットルの水を飲む場合は400~800mgのナトリウム、食塩換算1~2gを摂取すべしということになります。

カリウムについては前述の通り、普通の食生活では一日に1000mgほど足りていません。里芋やサツマイモ、ジャガイモには100gあたり300~600mgのカリウムが含まれますので、こういったイモ類を積極的に食べるようにするするとともに、昆布やワカメ、ヒジキ、切り干し大根などを食卓に取り入れるようにするといいでしょう。
ナトリウムと同様、カリウムは食事で簡単に摂取できるため、特にサプリメントで摂取する必要はありません。

ただしカリウムは水に溶けて調理で流出しやすいため、茹でるよりも電子レンジを使うほうがカリウムを上手に摂取できます。
なおカリウムのサプリメントもあります。こう書くと「カリウムは腎臓に悪い」と言い出す人が出てきそうですが、もともと腎臓が悪い人(カリウムの排泄に問題がある人)がボトルを一気飲みでもしない限り問題はありません。腎臓などに問題があってカリウム排泄が上手くできない人がボトルを一気飲みすると、「高カリウム血症」になる可能性もあります。すると細胞内のカリウムイオンが増えてナトリウムイオンが細胞内に入りにくくなり、ナトリウムポンプが上手く働かなくなります。

すると心臓の収縮に問題が起こり、不整脈が起こるなどして心臓停止につながることもありえます。
そのため、腎臓病ではカリウム摂取を控えることがあります。このような場合は、茹でることによってカリウムをわざと流出させるような調理法が行われます。


※4: Negative balance of calcium and magnesium under relatively low sodium intake in humans. J Nutr Sci Vitaminol (Tokyo). 2003 Jun; 49( 3): 201-9.

※6: Compared with usual sodium intake, low- and excessive-sodium diets are associated with increased mortality: a meta-analysis.
Am J Hypertens. 2014 Sep; 27( 9): 1129-37. doi: 10. 1093/ ajh/ hpu 028. Epub 2014 Mar 20.

※14: Urinary sodium and potassium excretion, mortality, and cardiovascular events.
N Engl J Med. 2014 Aug 14; 371( 7): 612-23. doi: 10. 1056/ NEJMoa 1311889.
  • 山本 義徳(やまもと よしのり)
    1969年3月25日生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。
    ◆著書
    ・体脂肪を減らして筋肉をつけるトレーニング(永岡書店)
    ・「腹」を鍛えると(辰巳出版)
    ・サプリメント百科事典(辰巳出版)
    ・かっこいいカラダ(ベースボール出版)
    など30冊以上

    ◆指導実績
    ・鹿島建設(アメフトXリーグ日本一となる)
    ・五洋建設(アメフトXリーグ昇格)
    ・ニコラス・ペタス(極真空手世界大会5位)
    ・ディーン元気(やり投げ、オリンピック日本代表)
    ・清水隆行(野球、セリーグ最多安打タイ記録)
    その他ダルビッシュ有(野球)、松坂大輔(野球)、皆川賢太郎(アルペンスキー)、CIMA(プロレス)などを指導。

  • アスリートのための最新栄養学(上)
    2017年9月9日初発行
    著者:山本 義徳


[ アスリートのための最新栄養学(上) ]