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鉄と筋肉2

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掲載日:2020.08.13
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〇神経伝達物質をつくる

セロトニンやドーパミン、ノルアドレナリンなどの神経伝達物質をつくるときにも、鉄は必要になります。
鉄が不足するとイライラしたり鬱やパニック症状を起こしたりすることがあります。

〇運動性貧血とは

「鉄欠乏性貧血」について紹介しましたが、ランニングする人がなりやすい「運動性貧血」というものもあります。マラソンランナーには貧血の選手が多いと言われています。

身体には血管が至るところに張り巡らされていますが、実は足の裏が重要なポイントなのです。
足の裏は血液循環の折り返し点となっており、足裏マッサージなどによって体調が良くなるのは、ツボがどうこうというよりは、血液循環が良くなるからかもしれません。

普通に歩くのに比べ、走ったときには足の裏に非常に強い衝撃が加わります。すると、そのときに足の裏にあった赤血球が壊れてしまうのです。
つまり走る機会が多いほど赤血球は壊れやすくなり、貧血にもなりやすいということです。

こうして起こる貧血のことを、特に「運動性貧血」と呼びます。ランニングをよく行う人は、それだけ貧血に気をつけなければなりません。特に女性ランナーは月経によって鉄が喪われやすいため、運動性貧血にになりやすいのです。

〇フェリチンとは

成人男性の体内には4.0g、成人女性は2.5gの鉄が存在します。このうち70%はヘモグロビンやミオグロビン、カタラーゼなど鉄含有酵素などとして機能を果たす「機能鉄」です。残りの30%は「貯蔵鉄」であり、この代表格がフェリチンです。フェリチンそのものはタンパク質であり、鉄と結合して肝臓や脾臓、骨髄、筋肉などに存在しています。

ヘモグロビンは酸素を運搬するという、身体にとって非常に重要な役割を担っています。そのため鉄摂取量が少なかったり、出血したりして体内の鉄が喪われるときも、ヘモグロビンの量をできるだけキープしようとします。

そしてフェリチンが先に無くなっていきます。つまりヘモグロビンの値を調べても、体内に鉄が十分にあるかどうかはわからないのです。フェリチンが少なくてヘモグロビンは通常値の場合、「隠れ貧血」だと言うことになります。


  • 山本 義徳(やまもと よしのり)
    1969年3月25日生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。
    ◆著書
    ・体脂肪を減らして筋肉をつけるトレーニング(永岡書店)
    ・「腹」を鍛えると(辰巳出版)
    ・サプリメント百科事典(辰巳出版)
    ・かっこいいカラダ(ベースボール出版)
    など30冊以上

    ◆指導実績
    ・鹿島建設(アメフトXリーグ日本一となる)
    ・五洋建設(アメフトXリーグ昇格)
    ・ニコラス・ペタス(極真空手世界大会5位)
    ・ディーン元気(やり投げ、オリンピック日本代表)
    ・清水隆行(野球、セリーグ最多安打タイ記録)
    その他ダルビッシュ有(野球)、松坂大輔(野球)、皆川賢太郎(アルペンスキー)、CIMA(プロレス)などを指導。

  • アスリートのための最新栄養学(上)
    2017年9月9日初発行
    著者:山本 義徳


[ アスリートのための最新栄養学(上) ]