トレーニングに影響する日頃の癖(4)<腹横筋の筋収縮反応>/三橋 忠
掲載日:2016.05.19
フィジークオンラインをご覧の皆さん こんにちは、パーソナルトレーナー&柔道整復師の三橋忠です。
こちらで、「トレに影響する日頃の癖」の8つのポイントをあげましたが、今回は「④腹横筋の筋収縮反応」に関して、解剖学、エクササイズ含めて細かく紹介していきます。
腹横筋について
腹横筋は腹筋の深部にあり、表層から腹直筋→外腹斜筋→内腹斜筋→腹横筋となり、目では見えない筋肉です。お腹をコルセットや腹巻きのようにお腹をぐるりと巻いた筒状の形をしており、主にインナーユニットと呼ばれる筋肉です。
ちなみに4大インナーユニットは、「腹横筋」、「横隔膜」、「多裂筋」、「骨盤底筋群」です。この4つの働きが悪いと、正常なウェイトトレーニングが行えないと言っても過言ではありません。
ちなみに私も交通事故で怪我をした際にインナーユニットのバランスを大幅に崩したことがあり、通常のエクササイズを正しいフォームで行っても、筋肉の使い方に偏りが出るので、このバランスを戻すまでにかなり神経を使いました(^^;)
腹横筋の解剖学
【起始】第7〜12肋軟骨、腰筋膜、腸骨稜、鼠径靭帯
【停止】剣状突起、白線、恥骨(恥骨結節、恥骨櫛)
【支配神経】肋間神経、腸骨下腹神経、腸骨鼠径神経
【主な機能】腹腔内圧を高める、体幹の安定
腹横筋は全身の筋肉で一番最初に収縮する
昔、腹横筋は呼吸のためだけの筋肉だと考えられており、トレーニングで鍛える筋肉としてはあまり重要視されてきませんでした。
近年、スポーツ科学の進歩とともに、腹横筋は全身の筋肉の中で一番最初に収縮する筋肉であることが分かりました。腹横筋を十分に使うことによって、他の筋肉も効率的に使えるようになります。
例えば、メジャーなチェストプレスでも、主動筋→大胸筋、協同筋→上腕三頭筋、拮抗筋→広背筋及びローテーターカフ、などの筋肉が関与してると思うのが、それ以外にも動作の最初では腹横筋が最初に収縮し、体幹を安定させてから上記にのような筋肉の働きが起きるので、腹横筋がきちんと連動し、ぶれない体幹の安定を感じることが、更なる高重量のトレーニングへの課題にもなります。
腹横筋とスポーツ
腹横筋の下部は脚の付け根に近い位置まで広がっています。このため、脚を動かす直前に反応して腹圧を高めて体幹を安定させ、それから脚を動かします。
しかし腹横筋の働きが弱っていると、脚の筋力に依存しやすくなります。すると背骨が不安定になってパワーが弱まるだけでなく、腰に大きな負担をかけることになるのです。
つまり、体幹のパワーを脚へと連動して伝えられるのは、腹横筋の働きがあればこそです。多くの競技が全身をスムーズに連動させるのですが、何かの原因でこの連動が欠けてしまう選手も多いです。
「脚で走ってしまっている」→「全身で走ってる」
「肩だけで投げてしまってる」→「全身を使って投げてる」
という様に、末端だけの運動になってしまうと、パフォーマンス落とすだけでなく障害にも繋がりやすいので、調子が悪い時は腹横筋からの体幹の連動を見直した方がいいです。
エクササイズ
体バランスに問題無い方は、フリーウェイトのBIG3といわれる、スクワット、デッドリフト、ベンチプレスなどの高重量を扱える種目を行えば、自ずと腹横筋は連動して使います。
しかしながら、重量が上がってくる段階で身体の左右差やバランスの崩れなどが起きたら、腹横筋が正常に活躍しているかを単独で確認する必要があります。
プランクポーズ、サイドプランク、逆プランク、片手片足プランクなどでチェックできます。下記はそこから更に連動性を高める種目です。
ワンレッグレッグレイズwithパートナー
腹横筋と腸腰筋を中心に、下肢の連動性を片足ずつ行い、左右差の確認をします。(1)片足は抱えるようにし、もう片足は真っ直ぐ床に着く位に伸ばします。
(2)真っ直ぐ伸ばした足を、パートナーの徒手抵抗を蹴るように、上に持ち上げて行きます。
(3)この動作を10〜15回繰り返し、徒手抵抗から筋力を評価します。
(4)反対側も行い、左右差を評価します。大腿四頭筋だけに頼らず、腸腰筋・腹横筋含めた全体で蹴り上げることを目標にします。
腹圧を意識するスクワット
(1)始姿勢で顎を引いて腹部を覗き込みます。クランチをするように意識をし、腹直筋・腹横筋の収縮を感じるようにします。
(2)ボトムポジションから立ち上がる瞬間に、トレーニングベルトをはじき返すように腹圧を高めます。
(3)パートナーがいれば腰部に触れてもらい、腹圧が抜けてないかチェックします。
※この種目はあくまで腹横筋からの腹圧を意識する手段なので、メインで行うスクワットではこれを踏まえて自然なフォームで行ってください。
まとめ
便利になった現代社会では、腹横筋は残念ながらほとんど使われません。例えば、「エクササイズ以外の日常で、腹圧が掛かるほどの動作をしていますか?」「仕事のストレスで呼吸が浅くなり、腹横筋の収縮・伸展が浅くなってませんか?」「デスクワークばかりで姿勢が悪くなり、腹横筋が働きずらくなってませんか?」私も思いあたるところが多々あります(苦笑)
効率の良いエクササイズを行う為に、「腹横筋の筋収縮反応」を今一度確認してみてはいかがでしょうか(^^)
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- 三橋 忠(みつはし ただし)
加圧トレーニングスタジオHAPPINESS&ハピネス整骨院 代表
ファイン・ラボフィット パーソナルトレーナー
大手スポーツクラブのチーフトレーナー・責任者を経験した後、パーソナルトレーニングスタジオ店長として4年間勤務し、整形外科・接骨院でもキャリアを積み、2011年に加圧トレーニングスタジオHAPPINESS&ハピネス整骨院を開業。パーソナルトレーニングで年間3500 セッションの指導を行う。
<資格>
・厚生労働大臣認定柔道整復師
・加圧スペシャルインストラクター
・米国認定ストレングス&コンディショントレーナー(NESTA-PFT)
・キネシオテーピングトレーナー
<競技実績>
2008年ボディビルMr茨城 準優勝
2008年ボディビルMr茨城70kg以下級 準優勝
2009年ボディビルMr茨城70kg以下級 優勝
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