フィジーク・オンライン

岡田隆 7階級メダル獲得もテンションが上がらないリオ オリンピック #5

この記事をシェアする

0
掲載日:2017.04.07

世界選手権とオリンピック

記事画像1
柔道にとってオリンピックっていうのはやっぱり集大成ですよね。毎年、毎年、世界選手権があって、しかも夏の同時期にあるんですよね。世界選手権の代表選考も同じ4月におこないますし、結局毎年同じことをするんですよ。

ですので、オリンピックも世界選手権も同じスケジュールでほとんど動いているんです。また同じことをやっているなって感じがあるんですよ。オリンピックに向かうまでは。

でも一つ大きく違うのは緊張感なんですよ。緊張感は通常の年とは全く違ってきますよ。世界選手権で世界一になっても、オリンピックで一番にならなければ、やっぱり社会からの認知は殆どされないんですよね。

やっぱりオリンピックで一番を取るための世界選手権であり、言い方をかえると、世界選手権ですら強化の一環になってしまうんですよね。そのようなことを考えると、もちろん緊張感は高まるんですけど、ようは毎年、毎年、オリンピックの模擬練習をしているようなものなので、動き自体は慣れていますよ。ですので特別何か構えることはないですよね。むしろ同じことを同じようにやるための4年間だったというように考えていました。

あと国際大会との差ということでは、オリンピックの会場の興奮度は全く違いますよね。選手たちも何というか人生を掛けてきているというか、気迫というか、そういう思いも伝わってきますしね。

だからといっても、こっちは何も出来ないんですよね。普段と同じトレーニングをするだけ、、、

世界選手権の時はオリンピック以下のことをやるかといったらやらないし、100%でいつもトレーニングを指導しているので、特にオリンピックだからといって変えるところがあるというのはちょっと微妙ですよね。むしろ同じように挑めるっていうのが大切ですよね。

選手によっては、世界選手権では実力を発揮できるけれども、オリンピックでは発揮できなかった選手達がいるので、やっぱり、オリンピックという大舞台、本当に信じられないぐらいの大舞台ですから、その場に立つと世界選手権の模擬練習だけではやっぱり克服できなかった部分があるんです。次の東京オリンピックまでにはその部分も意識していきたいですね。

でも、繰り返しになりますが、オリンピックだから何かを変えるということよりも、今度の東京オリンピックにそなえて、毎年の世界選手権で良いシミュレーションをしていくって感じです。

史上初の全階級メダル獲得でも、、、

記事画像2
リオのオリンピックでは、結果的には7階級全てでメダルと取ったというのは、この新しい体重制になって史上初ですので、とても素晴らしいとこだと思うんですけど、実はリオにいる期間は僕らは全く やったぞ!!とかテンションなんかは一切上がってなかったんですよね、、、

なんでかというと、競技は勝負なので、銅メダルっていうのは一度負けてるんですよね。もうその時点で気持はあまり晴れないですよね。まあ、メダルが取れて良かったなって少しはホッとはしますけど、あまり嬉しくは無いですよね。

やっぱり金メダル以外はみんな嬉しくは無いんですよ、、、

7階級でのメダルは銅、銅、金、銅、金、銅、銀だったので、初日の2階級で銅、銅だったんですよね。「これは、やばいかもしれない、、、」って空気は漂ってましたよね。初日の2階級は選手の実力も高く、金メダルが取れる階級だったんですよ。


リオオリンピック結果
男子 60kg級  髙藤 直寿 選手   銅メダル
男子 66kg級  海老沼 匡 選手   銅メダル
男子 73kg級  大野 将平 選手   金メダル
男子 81kg級  永瀬 貴規 選手   銅メダル
男子 90kg級  ベイカー 茉秋 選手 金メダル
男子100kg級  羽賀 龍之介 選手  銅メダル
男子100kg超級 原沢 久喜 選手   銀メダル


そして、翌日に大野選手が金メダル取って、ホッと一息、良かったってなって、次の永瀬選手も金メダル第一有力候補だったんですが、これが、銅メダル、、、

今回のオリンピックはまずいかもってところで、ベイカー選手がまた金とってホッとして、次の羽賀龍之介選手も前年の世界チャンピオンでかなりの実力があったのですが、これもまた銅メダルで気持ちがダウンして、、、って感じだったので、開催中は浮かれた気分は全く無かったですよ(笑

波が大きくて気持ち的にすごく疲れたっていうか、、、でも、帰国してみたり、終盤になってみると、日本では凄くメダルラッシュで盛り上がっているって話を聞いて、「ふ〜〜ん??」ぐらいだったですよね。全然そんな感じじゃなかったんですよ。

僕達は選手に一番上に行かせてあげたかったんですよね。皆そういう実力を付けてきた4年間だったんで。最後に発揮さえできれば、みんな金メダル取れる力はあったんですよね。みんなそういう選手だったから余計辛かったんですよ。テンションが全く上がらなかった、、、

例えば、ベスト4にも引っかからない、ベスト8ぐらいの選手が銅メダルだったら、「あ〜〜よかった〜〜!」ってなるんでしょうけど、みんな金メダル取る実力があっての、銀メダルや銅メダルだったので、やっぱりこっちは悲しいんですよね、、、

2020年 東京オリンピックに向けて

最近は東京オリンピックに向けて盛り上がってきていると思うのですが、東京オリンピックも同じ形で進んでいます。いまは、新しい課題がどんどん見えてきているので、それを解決しないといけないんですよね。でも、今の段階の課題はそれこそ、エビデンスもないし、参考になる事例はあっても、解決方法はまだ見つかっていないことばかりなんですよね。だから自分たちで編み出して1つ1つ解決していくしかないんですよ。そのような面での不安はありますね。

さっき言ったように基本的なことを徹底的にやるっていうのは、徐々に当たり前になってくると思うので、それで結果が出るっていうのはリオで終わったんですよ。今は更にもう一段上に行って、みんなを金にするために、基本は行いつつも浮き出た課題を解決するためにチャレンジしていくしかないですので、難しい部分もありますし、不安もありますね。でも新たな挑戦ですから、ワクワクもしています。それを毎年開催している世界選手権で試していくしかないですね。



■岡田隆スペシャルインタビュー
岡田隆 トレーニングとの出会い #1

岡田隆 追求そして、石井直方教授との出会い #2

岡田隆 柔道代表チーム合流と当たり前のトレーニングとの葛藤 #3

岡田隆 トレーナーを隔てる、フィジカル系とボディメイク系 #4

岡田隆 7階級メダル獲得もテンションが上がらないリオ オリンピック #5

岡田隆 制限の中でのトレーニングとトレーニングの重要性 #6

岡田隆 TVと栄養、そして東京オリンピックへ #7
■岡田 隆(オカダ タカシ)
日本体育大学 体育学部 准教授
第50回日本社会人ボディビル選手権大会 男子無差別級 優勝
第22回東京オープンボディビル選手権大会 男子70Kg以下級 優勝
日本オリンピック委員会 強化スタッフ
文部科学省 スポーツ功労者顕彰
JATI-AATI
NSCA CSCS
柔道四段

■SNS
facebook
twitter
blog

Recommend