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最強の肩とローテーターカフ〜肩甲上腕関節の動きと構造を理解する〜

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掲載日:2019.01.25
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目次
・シンプルに肩の構造を理解する
・上腕骨頭の転がり/滑りを理解する
・やっぱり棘上筋は大事
・意外と知らない肩甲下筋、小円筋、棘下筋
・まとめ

シンプルに肩の構造を理解する

まずはじめに肩関節とは『肩関節複合体』といいます。

・胸鎖関節
・肩鎖関節
・肩甲胸郭関節
・肩甲上腕関節

この4つの関節により上肢の運動を担っています。
いわゆる一般の方がいう肩関節とは4つ目の肩甲上腕関節のことを指しています。

今回はこの肩甲上腕関節の構造を中心としてお話していきます。

肩甲上腕関節は、大きな上腕骨頭(ボール)と小さな肩甲骨の関節窩(受け皿)からなります。
縦径は1.9倍、横径は2.3倍で大きさはゴルフボールがその1/4の大きさの硬貨の上に乗っているような構造となります。
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この構造は人間が上肢を使用するようになり、人類発達の過程で安定性よりも可動性を優先した結果となります。

この大きな上腕骨頭が小さな関節窩の中で動くには非常に緻密な筋のコントロールが必要となるわけです。

そして骨頭と関節窩の直上には烏口肩峰アーチという屋根が存在し大きな逸脱がないような構造としての役割を果たしています。骨頭と烏口肩峰アーチの間にはわずか1cmという間隔が存在するのみです。

いかにこの狭い空間内で骨頭を動かすかが後に説明するローテーターカフの主な役割ということになります。

上腕骨頭の転がり/滑りを理解する

上腕骨頭は主に『転がり=回転運動』と『滑り=並進運動』という2つの運動により狭い空間を動いています。

上腕骨頭をボールとして考えて頂けるとわかりやすいかも知れません。このボールは肩甲上腕関節を22°回転すると転がる為に1cm上方へ並進してしまいます。
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肩関節は過去の記事にも説明した通り、屈曲や外転運動の際に肩甲上腕関節が2°動くと肩甲骨が1°と約2:1の割合で動きます。これを肩甲上腕リズムといいます。よって肩甲上腕関節は狭い空間で最低でも120°回転しなければいけません。

22°で1cm上方へ並進する上腕骨頭をいかに回転させ下方へ並進させることで5〜6倍の可動域を生むのかがこれから説明するローテーターカフの主な役割となってきます。

やっぱり棘上筋は大事

肩関節を外転する主動作筋である三角筋は上腕骨を強力に上方へ引き上げます(上方並進)。
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この図からもわかるように上方並進が進めば烏口肩峰アーチへ上腕骨頭は衝突し肩関節は適切に外転することは出来ません。この三角筋の上方並進という力を上腕骨頭の一番近い位置から上腕骨頭を関節窩に押し付けて回転する力に変換しているのが棘上筋ということになります。

「棘上筋がなぜ損傷しやすいのか?」
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これは棘上筋の走行が関係しています。
棘上筋は三角筋の強力な上方並進を回転へ変換する為に烏口肩峰アーチの下を走行しています。
他のローテーターカフも含めて協調した運動が出来ていれば問題ありませんが、何らかの理由で動きのバランスが崩れると棘上筋は上方へ並進してきた上腕骨頭と烏口肩峰アーチに挟みこまれ直接圧迫を受けるようになります。

これが棘上筋が非常に損傷しやすい力学的な理由となります。

意外と知らない肩甲下筋、小円筋、棘下筋

では棘上筋以外のローテーターカフの役割を一つずつ解説していきます。
まずは肩甲下筋です。
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肩甲下筋は、肩甲骨の前面から上腕骨の小結節に付着しています。肩甲下筋は非常に幅の広い内旋筋です。
肩甲下筋はその走行から棘上筋と同様に関節窩への圧縮に加えて下方への並進力を持っています。

また外転運動においての三角筋(アウター)と棘上筋(インナー)の関係性と同様に内旋運動において大胸筋(アウター)の大きな運動を肩甲下筋はインナーマッスルとして支えています。

次に棘下筋と小円筋です。

肩甲上腕関節は前額面上の外転では外旋しなければ突出した大結節が肩峰下空間の組織を挟みこみ衝突する為に最大限外転することは困難です。

皆さんも実際にやってみるとわかりやすいかもしれません。
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まずは肘関節を90°曲げます。その後その位置を維持したまま外転します。
すると外転は約45°付近での制限を受けます。

これがいわゆる外転におけるインピンジメントと言うことになります。その状態で肩関節を外旋してそのまま外転してみるとどうでしょうか?
大体の方は外転可動域が改善し最終域までスムーズな運動が可能となります。

この衝突を回避するための外旋運動は実際にはこのような明確な境はなく微細はコントロールをして運動を円滑にしています。
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棘下筋と小円筋は、肩甲下筋と同様に下方への並進に加えてその走行から外旋作用を持っており前額面上や肩甲骨面上での外転運動で必要な外旋運動を担っています。

外旋筋群(棘下筋、小円筋、三角筋後部)は肩関節の筋の中でも総筋量で占める割合が比較的少なく、最小の等尺性トルクしか生じません。
三角筋後部の外旋トルクを除くと棘下筋、小円筋は非常に重要な役割があるにも関わらず常に高負荷にさらされていることは言うまでもありません。

トレーニーの多くは、ラットプルダウン等のプル系種目やリアレイズで三角筋後部線維を特異的に発達させています。
このことにより肩関節の外旋運動において三角筋の後部線維が優位となりやすい状況となっておりこのことを共同筋間のアンバランスと言います。

共同筋間のアンバランスとは、同じ作用を持つ筋肉内での働きやすさの不均衡をいいます。
肩関節外旋の場合には三角筋後部線維が優位になることで上腕骨頭の安定性が欠如することが原因で肩関節の痛みに繋がっているケースも少なくありません。

一般のトレーニーもこの外旋運動を積極的に行うべき理由はこのような不均衡を是正するためかもしれません。

ただし、筋を鍛えることが動きが良くなることに繋がるのかという点については必ずしもそうではないように思います。

この1stポジションでの外旋運動を実施したからといって肩関節屈曲や外転の動きが良くなり痛みがなくなるわけでは必ずしもありません。

動きを良くする為には最終的には実際の動きをトレーニングすることが最も大切です!
私が動きを見てトレーニングする上で大切にしていることは…

1、シンプルな動きからその人の運動のパターンや筋のアンバランスを確認する
→まずは評価が大切です

2、不十分な動きや過剰すぎる動きを制御するとどう変化するのか
→実際にその人にマッチした動きかを理解する

3、筋トレ中だけではなく日常生活の間も動きを意識すること

まとめ

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→上腕骨頭が関節内で衝突なく動くためには転がりと滑りが重要。

→転がりと滑りを促すためのローテーターカフはそれぞれ役割は異なる。

→ローテーターカフや肩関節の動きを理解することが最善の方法を見つける近道。

残念ながらこれをやれば必ず治ると言う治療法は存在しません。
まずはトレーニー自身が筋肉や関節、運動学を理解し学ぶことが大切です。痛みで悩んでいる方は自分の身体を信頼できるセラピストに評価してもらい身体の特徴を理解することがまず第一歩です。

Twitterをフォローして頂ければ僕自身が日々学んだことや今までに学んできたことなどを皆さんとシェアすることが出来ますのでご活用下さい。

参考文献:Donald A.Neumann 嶋田智明,(2006)『筋骨格系のキネシオロジー』医歯薬出版株式会社.
  • 興津 佑亮(おきつ ゆうすけ)
    【所属】
    西淀病院、NexusMotion大阪、MovementSystemLab
    【経歴】
     2007年~現在まで西淀病院 リハビリテーション科にて勤務。急性期から回復期、在宅で整形外科、中枢神経系疾患と様々な臨床現場での経験あり。入職当初より環境に恵まれPNFの学習も続けており。現在はMSIアプローチとPNF等を利用して患者の治療へ応用して実践している。全国でMSIアプローチ講習会を講師、アシスタントとしても活動している。
    【認定資格等】
    ・理学療法士
    ・IPNFA 認定 PNF Basic course 1+2 修了
    ・IPNFA 認定 PNF Advanced course 3 修了
    ・Diagnosis And Treatment Of Movement System Syndromes Introduction to Concepts and Applications.(導入編コースを現地で修了)
    ・Diagnosis And Treatment Of Movement System Syndromes Upper Quarter Advanced Applications.(応用編上肢コースを現地で修了)