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2014 WBC FITNESS KOREA 大会レポート/フィジーク侍7人衆の挑戦

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掲載日:2015.06.05


「WORLD BODY CLASSIC(WBC)」とは
みなさんは「WBC」という大会をご存じだろうか。多くの人は、野球「World Baseball Classic」通称"WBC"を連想するだろうが、今回ご紹介するのは「World Body Classic」である。この大会の前身は、『 Muscle Mania Korea 』であり、米国を本拠地に置くマッスルマニアとの契約が切れ、名称を変更した大会である。

この大会で、日本からはJapan Fitness Generationsのフィジーク侍7人衆が海外コンテストに初参戦した。今回は、Japan Fitness Generationsの代表を務める和久井 拓(わくい・ひらく)氏の大会リポートをご紹介しよう。

 


大会参加のきっかけ
今回7名で臨んだWBC KOREA 2014。発端は私がトレーニング開始時に三軒茶屋のティップネスで一緒にトレーニングを行っていたカン・ウンボク[以下カンさん]氏からのお声がけいただき、韓国コンテスト探しと、出場計画を練っていたものを、今年の春先に私がチームリーダーを務めさせていただいているフィジークチーム『Japan Fitness Generations[以下JFG]』のメンバーに情報共有したところから。

そして、先じて海外コンテストに出場するチームメンバーである長江アキノブ[以下ケビンさん]氏より、韓国人選手のアメリカでの活躍とそのレベルの高さ、層の厚さについて語っていただいたことから、それを実際に自分たちの目で確かめるべく出場意志を決定するに至った。

運営者がわざわざ日本人のために行ってくれた事前セミナー


大会出場までの準備
WBCとは『 World Body Classic 』の略称であり、前身は『 Muscle Mania Korea 』である。米国を本拠地に置くマッスルマニアとの契約が切れ、名称を変更。ただ、前身がマッスルマニアであるため、上位入賞者が本国のマッスルマニアへ出場する際のサポートは、今回のコンテストへの申込に際し、選手登録等は全て韓国語で行われるため、必要情報を私[和久井]が人数分を集め、それをカンさんに送り、カンさんに韓国語に翻訳いただき、WBC事務局へ選手登録。

男性部門は4部門から構成されており、今回はモデル部門2名、フィジーク部門7名、マッスルモデル部門1名で、トータル3部門へのエントリーを行った。基本登録料金は50,000ウォン[約5,000円]で、1カテゴリ追加毎にプラス10,000ウォン[約1,000円]であった。

また、WBC事務局の取り計らいで、日本選手向けにコンテスト前日に特別セミナーを開催いただくことが決定していたため、参加のために前日の昼頃に韓国入りする便を手配し、そこから3泊4日の遠征スケジュールを組んだ。

私と植田知成[植田さん]氏はモデル部門へもエントリーしていたため、審査で必要となる衣装を調達。モデル部門では3つのステージで審査が行われる。はじめにクラブウェア、次にスポーツウェア、最後にスウィムウェアの順番に衣装を着替えてステージに登場するため、その衣装を日本から持参する必要があった。

クラブウェア審査はオシャレなスーツスタイル、スポーツウェア審査はステージ上で見栄えのするスポーツスタイル、スウィムウェア審査はボクサーショーツスタイルの丈が短くフィットしたスィムウェアスタイルで臨むこととなる。どれも、現在の日本のコンテストでは取り入れられていない審査方式であるため、今回はWBCの2013年の様子を動画で研究しながら、着用するものを決定した。

ちなみに、一番最後まで迷ったのがスポーツウェアであった。普段、ジムでトレーニングを行っているものの、ステージ映えするスポーツウェアとは何かを考えたことはなかったし、見た記憶もなかったため、海外のフィットネスモデルたちの広告画像等を参考にしながら、最終的にアメリカンフットボールウェアを選択。手に小道具を持っても良いということで、分かりやすさ重視でショルダーパッドも用意した。

派手なポスターが街中にも貼られる


韓国訪問エピソード
8月30日(土)がコンテスト当日であったが、WBC運営局が日本から初参戦する我々に、事前セミナーを行ってくれるとのことで、29日のお昼の便で羽田を発ち韓国へ。空港からホテルへ向かい、一旦荷物を置いた後に、セミナー会場へ向かった。空港から自動車移動が続いたため、この時点では韓国内の景色を自動車の車窓から眺めたのみ。次の日、コンテストを終えて初めて街中を歩き、韓国の街の雰囲気に触れたと言っても過言ではない。

正直な感想は、街行く人々は日本同様、一般のアジア人として、骨格も体型も殆ど変わらない。我々でも、街中、ショッピングモール等でも大注目されるし、電車に乗っても例外なく視線を集め、一緒に写真を撮って欲しいとも言われるが、コンテスト会場で見る選手達は完全に別物。

韓国風の美男美女が勢揃いし、そのレベルの高さと、層の厚さに圧倒された。街中を歩きながら、普段、彼らはどこでどのような生活をしているか、そんなことを考えさせられるものであった。そして、日本と韓国の関係の悪化についての話題が目立つ昨今、実際に現地行ってみると、そんなことはまるで感じられず、それどころかWBC運営局の会長はじめ、非常に親切にご対応いただいた印象であり、我々選手一同、お世話になった韓国の方々に心から感謝している。


いざ大会本番へ
選手の会場入りは午前8時。江南地区にある体育館で行われた。会場に入り、辺りを見回してみると、日本のコンテスト会場に集う選手と異なり、殆どの選手がほぼタンニングを行っておらず、色白のまま。会場内で準備が始まるとタンニングクリームを塗り始め、日本人選手たちよりも黒く仕上がっていく。

そして、驚いたのは男女問わず、専属のメイクさんにメイクを依頼し、顔だけは真っ白に塗り上げ、眉毛を太く描きこむこと。韓国は男女ともに美白文化とは聞いていたが、全ての部門の選手が漏れなくメイク。日本ではそのような光景を今まで見たことがなく、特に男性の美意識の高さが伺えた。

コンテストはマッスルモデル部門から開始され、モデル部門、フィジーク部門と移っていく。各カテゴリごとにその場で順位が確定し、表彰までが行われる。日本人で最初の出番は加治さんで、マッスル部門へ出場。高身長でバルクのある選手も数多く参加するなか、見事4位入賞を果たした。幸先良い結果を受け、他日本人選手たちもより一層気合いが入った。

続くモデル部門には、和久井[私]と植田さんがエントリー。モデル部門は3度の衣装チェンジがあり、1.クラブウェア[≒スーツ]審査、2.スポーツウェア審査、3.水着[ショート丈]審査で構成される。加治さんのマッスルモデル部門は体重で階級が分かれるのに対し、モデル部門では身長別に階級が分かれる。私と植田さんがエントリーしたのは178cm以下のクラス。

クラブウェア審査


スポーツウェア審査


ステージ上では、各審査を約10名程度ずつのグループで一斉に行い、一旦ステージ袖に下がった後に、一人ずつウォーキングとポージングを行う。基本ポーズはフロント、サイド、バック2ポーズ、フロント。1ポーズにつき、約3秒ほど時間をかけ、ゆっくりと行うのがポイント。個人ポージングを終えると、即、次の衣装へと着替えてステージ準備を行う。

このモデル部門では、私も植田さんも入賞ならず。体のサイズで言えば、我々でも少し大きめの仕上がりではあったが、衣装を3度も変えるというところからもお分かりいただけるように、肉体だけが審査のポイントではない。髪型、メイク、衣装、ウォーキング、ポージング等、韓国基準で評価されるよう事前に入念な研究と準備を重ねなければ、勝利することがなかなか困難であると言える。今後、WBCの本カテゴリに臨む方は、コンテスト前に何度も韓国へと足を運んだり、韓流スターの衣装、髪型、メイク等を研究した上でステージに登ることをお勧めする。

続いて、フィジーク部門へ。フィジーク部門は我々が最も力を入れて臨んだ部門であり、結果としては徳久さん4位、珠玖さんが特別賞を受賞。徳久さんのキレのある肉体、珠玖さんの笑顔は韓国コンテストでも評価された。

フィジーク部門の表彰式


ステージングは、モデル部門と同様、約10名ほどのグループから個人へと移っていく流れで行われる。ポージングは、フロント、サイド、バック2ポーズ、サイド、フロントの順にこなしていく。ここで重視されるのが、体の軸が真っすぐ一直線に通った状態でのポージングであるか、自然なポージングであるかということ。欧米のIFBBに見られるヂェスチャーが大きめなポージングはあまり好まれず、片足に大きく重心を置くポージングは評価されにくい。

そして、一番大きな違いはピックアップ審査がなく、グループと個人ポージングのみで審査されるということ。本WBCのフィジーク部門では、その短い審査時間の間に、審査員に印象付けるだけの肉体とポージングが必要となる。ちなみに、参加選手は約60名。身長別ではなく始めからオーバーオール。

そして、マッスルモデル部門、各階級にエントリーしている選手の殆どがフィジーク部門へエントリー。高身長で広い背中、大きな肩、くびれたウェスト、洗練されたルックスの選手達の中で、待機中の我々と韓国選手たちとを客観的に比較してみて、我々は小さく、細かったというのが率直な感想である。

ちなみに、優勝はマッスルモデル部門にも出場していた選手で、背中や肩の広がり、筋量ともに素晴らしいものだった。楽屋裏でのパンプアップ中に目星をつけていた選手の一人もである彼は、筋量はボディビル上位選手、ルックスとボディバランスはフィジーク選手といった具合で、現在の日本選手の筋量、バランスとは明らかな違いがあった。そして、韓国人上位選手たちの殆どがそのバランスの肉体であった。


結果を受けて感じたこと
今回、韓国内でもWBC前後に複数のコンテスト、それからマッスルマニアアジアがシンガポールで開催されることを受け、韓国トップ選手の全てがWBCに参加したわけではなく、上位争いをするような選手がまだまだ存在するとのこと。

昨年の米国マッスルマニアで優勝した選手の姿もなく、韓国人選手の層の厚さ、レベルの高さを改めて思い知らされた。彼らを見ていると、海外で活躍する世界トップレベルの韓国人選手たちをお手本にして肉体作りを行っているせいか、先にも述べた通り、現在の日本人フィジーク選手よりも、数段、広がりと厚みを持った選手たちがひしめいている。

骨格がそもそも大きいのでは?と思われるかもしれないが、そこは我々でも街中で写真撮影をお願いされるほどであり、待ち行く人々は日本人の体格とほぼ変わらない。ただ、一旦コンテスト会場に入ると、我々よりも明らかにフィジーク選手として完成された肉体を持つ選手が多勢いる。つまり、フィジーク選手としての肉体の作り方が彼らの方が数段上手であると言える。正直、今回参加した多くの選手がそのことを痛感し、今のままでは世界で通用しないことを認識させられた。



今後の目標ならびに課題点
肉体に国境なし!ということで、世界で通用する肉体を作り上げるには、とにかく世界のレベルを肌で感じ、その中で自分たちの弱みをしっかりと認識し、その課題を解決するためのトレーニングを積み重ねるしかない。

特にオーバーオールで世界で勝負出来るフィジーク選手になるには、今の我々では筋量が全く足りず、そして背中や肩の広がりについても、全く歯が立たない状態であるため、まずは徹底した全体的な増量と、特にポイントとなる肩や背中の広がり、そしてそこから伸びる腕のサイズを今までの倍にするつもりでトレーニングを行わなければならないと考えている。

今のままの肉体で他の世界コンテストにエントリーすることも可能だが、勝ちにいくというよりも視察に行くレベルになってしまう可能性が高く、横に並んだ際に全てが足らないという結論に終わることは想像に容易い。今後は、バルクアップ含め海外基準の肉体作りに専念し、現在抱える課題を少しでも解決した状態で次の海外コンテストに臨まなければ同じ結果の繰り返しになると考えている。

今後、今回WBCに出場した殆どの選手が、増量期間に突入し、来年、さらに将来へ向けた世界に通用する肉体作りを行う予定である。また、互いの研究結果やステータスといった情報を共有し、切磋琢磨しながら真に世界レベルに昇華できるよう取り組むことで合意している。

何はともあれ、日々の環境は非常に重要。今後、多くの日本人選手が世界を視野に入れた肉体作りを行い互いが高いレベルで研鑽できるような環境作りに、我々JFGチーム一同、全力で臨みたいと考えている。
 


 
  • Japan Fitness Generations
    代表:和久井 拓(わくい・ひらく)
    私たちは、フィットネスチームの活動を通じ、フィットネス業界のボトムアップと同時に、世界で活躍することの出来るフィットネスモデルの輩出を目指し、国内外の様々なコンテストに出場、自己研鑽、チームの研鑽を積極的に行ってまいります。また、そうした活動を一般の方へ広く伝えていくことにより、肉体を鍛える事の素晴らしさはもちろん、高齢化の進む中、健康的で楽しいライフスタイルの構築に寄与してまいります。

TEXT :
Hiraku Wakui
フィットネス&ボディメイク情報誌
[ PHYSIQUE MAGAZINE 003 ]

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