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ビタミンCを積極的に摂ろう! / 分子栄養医学管理士の星真理さんに学ぶカラダ作りの栄養学 (2/2)

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掲載日:2015.06.05


ビタミンCを助けるビタミンP


ビタミンCの働きを助けるビタミンPは、野菜や果物の皮や、皮と実の間に多く含まれます。ミカンの白い薄皮にも含まれます。その意味では野菜や果物は丸ごと全部食べると良いのですが、農薬の問題などもありますので、必ずしも良いとは言えない場合もあります。最近では家庭菜園で野菜や果物を作る方も増えていますが、そういう物は安心して食べられます。

1 ビタミンCの働き酸化を防ぐ
酸化とは、体の分子のバランスが崩れる事で、反対に安定する事が還元、といえます。少し難しい言葉で説明しますと、ビタミンCは、電子の足りなくなった(酸化した)細胞の分子に自分の持っている電子を上げて、体内の分子を安定(還元)させています。

①LDLコレステロールの酸化抑制
コレステロールは2種類あります。HDLコレステロールは体の中のゴミを回収してくれるゴミ回収トラックの様な働きをするので、善玉と言われています。余ったトラックをずっと放置していると、酸化してLDLコレステロールになってしまいます。LDLコレステロールや、血液を固める働きのある血小板が増えすぎると、動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞などの病気になります。ビタミンCは血小板の量を調節したり、LDLコレステロールの酸化を防いだりして、大きな病気を予防します。また、血液の中でガンの元となる「活性酸素」が発生する事がありますが、これを消去する働きがあります。

②眼を活性酸素から守る
現代は高画質のテレビやパソコン、テレビゲーム、携帯電話など、光の刺激がたくさんあります。水晶体は白目の部分にある透明な物質ですが、眼を酷使すると水晶体は酸化し、酸化が進むと白内障になります。ビタミンCは昔に比べ、遥かにたくさん必要になったといえます。眼だけに限らず、この様に生活様式も食べ物も変わって来ていますから、昔に比べて多くのビタミンCが必要になったというのもお分かり頂けると思います。

③ビタミンEの再生
ビタミンEは脂の酸化を防ぐ事で自身が酸化してしまいます。ビタミンCは、酸化したビタミンEに電子を上げてビタミンEを還元します。その他にもグルタチオンというアミノ酸や、β-カロテンの再生にも関わっています。このように、ビタミンCは様々な物質に電子を上げて分子の安定を行っています。ビタミンEを還元し酸化したビタミンCに、また別のビタミンEが電子を上げて還元し、ビタミンCとビタミンEは互いに助け合っています。ただしそれでもビタミンEの酸化が追いつかないと、ビタミンB群がビタミンEの還元をし、ビタミンBは排泄されます。ビタミンCをたくさん摂ると、何とビタミンBが不足するのです。

④メラニン生成の抑制 → 美白
ビタミンCは濃色メラニンを淡色メラニンに戻したり、メラニンが作られない様にする働きがあります。また、ビタミンEと共同して細胞膜の脂の酸化を防ぐ働きがあるので、化粧品にビタミンCやビタミンEがよく使われます。皮膚は吸収器官ではありませんので、外から塗るだけではなく、食べて体内から防ぐ方が更に効果的だと言えます。

2 ビタミンCの働き免疫機能を高める
①アレルギーを抑える
現代病といわれているアレルギーですが、原因物質をアレルゲンと言います。食物の他にダニ、カビ、花粉などがあります。アレルゲンが体内に入ると、パトロールが見つけ、形を覚えます。次にアレルゲンをやっつけるぞ、と反応する物質を作ります。そして体内でアレルゲンを引き寄せ、攻撃物質を放出させます。これがアレルギー反応です。激しく抵抗して追い出そうとする症状ですが、ひど過ぎると困ります。ビタミンCはアレルギー反応物質の出過ぎを抑え、症状を悪化させない様にします。

②ウィルスの不活化
ウィルスは細胞核の中に入り込み、その細胞を殺してしまいます。ビタミンCはウィルスと戦う戦士インターフェロンの生成を促進し、ウィルスの働きを失わせ、感染力を無くしますので、細胞が死なずにすみます。

現代は風邪薬にもビタミンCが入っている時代ですが、ウィルスにビタミンCが効くというのは、1940年代に既に発見されていました。しかし、この時代はペニシリンなどの抗生物質や、サルファ剤など即効性の高い薬が開発された時代でもあり、世界はビタミンCではなく薬に飛びついてしまい、この働きが再度注目されるのに60年くらい遠回りをしてしまった事になります。
<アレルギー反応が起こる場所と症状>
気管支 → 喘息
鼻 → 鼻炎、鼻づまり、くしゃみ、鼻水
皮膚 → 湿疹、アトピー性皮膚炎
消化管 → 嘔吐、下痢
3 ビタミンCの働き生理機能の活性化
①しなやかさを与えるコラーゲンを作る
コラーゲンは、体を構成する全タンパク質の30%を占めています。その内訳としては、皮膚に40%、骨や軟骨に20%、その他に血管や内蔵にもあります。コラーゲンは、元々はタンパク質の3本の細い糸です。1本ずつ別々ですと弱くて切れてしまいますが、鉄とビタミンCによって編まれ強化されます。コラーゲンが更に束になって繊維状になり、例えば骨の周りに張り付いて、骨の柔軟性や強度を保っています。コラーゲンは周囲に水を引き寄せる性質がありますので、コラーゲンが密集していれば潤いとハリが保てます。紫外線に当たり過ぎると皮膚のコラーゲンが壊れてシワが深くなるといわれていますが、ビタミンCは酸化したコラーゲンを還元するので、シワの予防・改善にもなります。
コラーゲンは、年齢と共に作られにくくなりますから、歳を重ねた肌が若い時と同じ様に潤いを保つには、ビタミンCなどの摂取量を増やして行かなければなりません。

②抗ストレスビタミン
体内には様々な神経伝達物質があり、ヒトがストレスを感じると、それが体内に伝えられて、発がん物質を作り出すなどの反応をします。しかしカルシウムやビタミンC、銅を摂ると、ストレスを伝える経路をストップさせ、悪い反応が起こりにくくなるので、ビタミンCは別名、「抗ストレスビタミン」と呼ばれています。ストレスが多く神経が高ぶって良く眠れない、という人は、寝る前にビタミンCを飲むと良く眠れると言われています。

③脂肪燃焼の元を作る
中性脂肪は分解され、細胞の中に取り込まれ、色々な栄養素の助けを得て、燃やされ、エネルギーの元になりますが、この時、カルニチンという鍵がないと細胞のドアが開けられません。カルニチンはリジンとメチオニンというアミノ酸から作られますが、細胞内でビタミンCが欠乏するとカルニチンがうまく作れなくなり、すなわち中性脂肪が燃やせなくなります。脂肪が燃えにくいのは困りますね。また、「慢性疲労性症候群」の始まりの原因の1つは、ビタミンCの欠乏と考えられています。

④貧血を防ぐ
胃酸の中にはビタミンCが含まれていて、あまり吸収の良くない鉄というミネラルを小腸で吸収しやすい形に変えます。肉や魚などの鉄を含んだ食品と、ビタミンCを含んだ食品を一緒に食べると、鉄の吸収力が上がります。唐揚げにレモンを絞るのかが論争になっていましたが、私は断然、絞るべきだと言います。野菜に含まれる鉄(非ヘム鉄)の吸収率は5%以下ですが、肉や魚に含まれる鉄(ヘム鉄)の吸収率は10〜30%です。しかしビタミンCがあると、その吸収率は非ヘム鉄で1.5〜2倍、ヘム鉄では何と約6倍にもなります。その他に、造血の命令をするビタミンB群の「葉酸」が酸化するのも防ぎます。

その他に効果が期待される働き


その他にまだまだたくさんの働きがあります。ビタミンCは、積極的にどんどん摂りたいですね。

・ガンの予防
・糖尿病の発症、合併症の予防
・ヘリコバクターピロリ感染による発ガン物質発生の改善
・重傷のやけどの初期治療
・脳機能の調整

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  • 星 真理(ほし まり)
    栄養整合栄養医学協会認定 分子栄養医学管理士
    栄養学の専門家として老若男女を問わず、一般人からトップアスリートにいたるまで、あらゆるニーズにも対応した栄養指導/栄養セミナーを個人、競技チーム、学校、企業を対象に行っている。
    著書「アスリートのための 分子栄養学」(体育とスポーツ出版社)

    分子栄養学(正式名称:分子整合栄養医学)
    Ortho-Molecular Nutrition and Medicine
    ノーベル賞を2つ受賞した米国人生化学者ライナス・ポーリング博士(1901〜1994年)が、栄養学と医学とを融合させて研究し、分子整合栄養医学として確立した栄養医学。

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[ PHYSIQUE MAGAZINE 004 ]

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