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トレーナー兼、鍛練家/週末漁師 山本 圭一

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掲載日:2015.06.05


東日本大震災の後、半年間ボランティアとして復興作業に従事した山本氏はその後、都会の生活を捨てサバイバルフィットネスを実現するために被災地である宮城県石巻市雄勝に拠点を移した。

サバイバルフィットネスは、人間という動物の能力を最大限に高める、本格的アウトドアトレーニングプログラムで、セカンドステージに上がりたい者、強くなりたい者、自分を変えたい者のためのトレーニングなのである。
  • 山本 圭一(やまもと けいいち)
    中学時代に独学で筋トレを始め、高校で本格的な筋トレと禅に取り組む。高校卒業後は自衛隊に入隊。その後、フィットネス業界に転身し、老舗クラブでの経験を経て、パーソナルトレーナーとして独立。著書「仕事ができる人はなぜ筋トレをするのか」は13万部を超えるベストセラーに。現在は、漁師の仕事をしながら、本来の生業である鍛錬家として勧善道場の運営を行い、雄勝町で暮らしている。

  • 小野寺 正道(おのでら まさみち)
    パワーラボ代表
    大学院博士課程在籍中にメディカルフィットネス施設の立上げに関わり、同ベンチャー企業でメディカルフィットネス事業担当取締役に就任。その後、独立して、IT企業、メーカー、人材会社、フィットネス事業者などで各種ヘルスケア関連の事業開発案件と産官学連携事業に従事している。

小野寺 今回は『月刊ボディビルディング』の別冊で体作りやフィットネスをテーマとする雑誌『PHYSIQUE MAGAZINE』が創刊される事になり、縁が重なって私も体作りを中心に活動されているトレーナーの方や一般のトレーニング愛好家の方々との対談を行う事になりました。山本さんが栄えある第1回目のゲストになるのですが、まずは、山本さんが肉体についてどのように考えておられるかについて、お聞きしたいのですが・・・。

山本 今機能的な体を作っていく事が結果として見栄えの良い身体を生んでいると思っています。ダイエットやシェイプアップ、生活習慣病の予防など、体作りのトレーニングを始める原因はいろいろありますが、まずは体を動かす機能そのものが中心になると考えているんですよ。

日常生活での動きや一つ一つのスポーツの動作は当然なんですが、どのような環境でも役立つような機能的な肉体を求めるトレーニングが大切で、私にとっては体作りそれ自体が目的ではありません。トレーニング方法は個人の“哲学”が反映されているようなものですね。

小野寺 トレーニング方法は個人の"哲学"ですか、トレーニングや体に対する考え方というか個人の根源的な思想とすると確かに哲学と言ってもいいかもしれませんね。では、山本さんの“哲学”を分かり易く例えるとどの様な内容なのでしょうか?


僕の哲学は“サバイバル”




山本 僕の哲学は“サバイバル”ですね。

小野寺 山本さんの経歴と一貫性がありますね。これを読まれる読者の方々に山本さんのおっしゃるサバイバルを少し分かり易く言い換えるとどうなりますか?

山本 そうですね、原始的な状況下でも尊厳を持って生き抜ける事で、それを実現する肉体と精神と知性・経験を持つこととも言ってもいいかもしれません。トレーニングを通じた体作りは一種の自己表現ですので・・・。

小野寺 自己表現ですか。うーん、その方向でトレーニングや体作りについて考えているトレーニーやトレーナーの方は少ないでしょうね。

山本 自己表現というのは、個人個人の魂、すなわち哲学が肉体に宿ってくるという事です。日々積み重ねていく事で、一人一人の根本的な考え方が肉体に反映されてくると思ってやっているんですよ。

小野寺 なるほど、トレーニングを通じて得られた肉体は単に見た目や身体機能を表しているだけではなく、その人の根本的な考え方が鍛えられた肉体に表れている、と捉える事も出来ますね。いまはトレーナーとしての活動は少なくなっているとは思うのですが、トレーニングをしている人やまだトレーニングをしていない人へのアドバイスはありますか?

山本 体を動かそうと思う、生き物として当たり前で本質的な衝動を誘発するトリガーを上手く引くということですね。トリガーは東京マラソン、スーパーマンや筋肉マンなどへの憧れ、ゴルフなどのスポーツ、などなど、人によって異なってくるので、星の数ほどいろいろとあります。トレーナーにとってはクライアントにとっての本当のトリガーを見つけてあげて、上手く引けるかどうかというところが重要な能力の一つだと思っています。



小野寺 具体的なトレーニング方法については如何ですか?

山本 効率の善し悪しは必ずしも大切ではないと思いますよ。トレーニングは毎日の積み重ねで、そこに喜びがありますから、そのタイミングで自分が存在している環境でできるトレーニングを実施して続けていきさえすればいいんですよ。都心部には都心部の、田舎には田舎での、旅先では旅先で、その時その時の環境を上手く使って楽しみながら鍛えていけばいいんですよ。

小野寺 それはトレーニングのベテランである山本さんだからというところもあると思うんですけど(笑)。

山本 少しはそういう面もあると思いますが(笑)、ジムの様な与えられた環境で行うだけがトレーニングではないんですよ。その気になればどんな場所や環境ででもしっかりとトレーニングをする事ができます。トレーニング用具や設備の整ったジムでのトレーニングは数ある選択肢の一つに過ぎないという事を理解できると、もっとトレーニングをする人も増えますし、フィットネスにしろ、ボディビルにしろ、やる人が増えてくるのではないかと思います。

小野寺 トレーニングを全く行った事のない人が取り組みやすくするのに多少の誘導は有効かもしれませんね。山本さんが運動未経験者にトレーニング指導をするとしたらどのようにされますか?

山本 まずは、ジョギングやランニングで、10kmを50分で走る事を目標にするといいですね。太り過ぎでゆっくり走る事も難しい人は別ですが。

小野寺 太り過ぎの人にはどうされますか?

山本 ある程度体を動かしても膝や腰に負担が無いように、最初の段階では食事調整での減量を勧めます。具体的な内容は単純なのですが、食物繊維を増やして最低限、野菜を1日で500g食べるようにします。

小野寺 食事を見直して体重を減らして、自分のペースで可能な距離・時間でランニングを始めてみる。徐々に距離を増やして、走るスピードも上げていって、ジョギングで10kmを50分以下を達成するまではどの様に取り組まれますか?ひたすら走ると理解して大丈夫ですか。

山本 走るスピードはどれだけゆっくりでもいいんです。慣れてきたら、ランジウォーク、サイドステップ、ダッシュ、などを適宜加えて複合的な走り方で10kmを走る事ができるようにしていきます。


<初心者向けのトレーニング>
1週目 ジョグ 体操&筋トレ 20分
2週目 ジョグ 体操&筋トレ 30分
3週目 ジョグ 体操&筋トレ 40分
4週目 ジョグ 体操&筋トレ 50分

※ジョグの合間にランジウォークやサイドステップ、ダッシュなどを入れる
※体操はラジオ体操のように行う
※筋トレは、腕立て伏せ、シットアップ、ジャンピングスクワットを中心に行う

小野寺 ランニング以外はどうされますか?筋トレはどのように導入していくのがよいでしょうか。

山本 走っている途中や走る前後のタイミングで、自分の体重を使った筋トレを行っていくように指導していきます。単純ですがいわゆる腹筋運動(シットアップ)や腕立て伏せ(プッシュアップ)、それに公園の鉄棒とかを使った懸垂(チンニング)や雲梯なんかもいいですね。

小野寺 周りの環境を上手く活用してトレーニングを継続していく、そのものですね。フリーウェイトやマシントレーニングといった一般的なジムワークには取り組まれますか?<

山本 走ったり自重での運動をしたりといったトレーニングを通して身体を動かす基本的な能力・体力がついた段階でバーベルやマシンに取り組んでいくのはいいと思います。ジムでのトレーニングをするために走ったり自重トレーニングをしたりという事では無いので、ぜったいに必要な要素ではないのですが、トレーニング効果を大きくしていく上では外せないかもしれません。

小野寺 他に気を付けるポイントはありますか?

山本 言うまでもないのですが、体作りで食事は大切ですよね。食べたもので体が作られるわけですから、素材として良いものを選んでしっかりと食べる事が大切だと思います。さっきも言いましたが、最近は雄勝の自然で育まれた海の幸と山の幸を獲れたての状態で食べたいだけ食べられますからね(笑)。たんぱく質の量とかカロリーとかそういうところを気にするのではなく、いい素材を存分に食べる事ですね。ほとんど野菜だけの時も多いんですが体にエネルギーが満ちてきますし、どんどんゴツクなってきていますよ(笑)。


現在は石巻・雄勝の自然で育まれた海の幸と山の幸を獲れたての状態で、食べたいだけ食べられるという

<食事について>
1週目 夕食の炭水化物を抜く
2週目 朝食の炭水化物を抜く
3週目 野菜を1日350g以上とる
4週目 朝食でのタンパク質摂取を増やす


小野寺 今回の山本さんへの謝礼はプロテインパウダーになると思いますけど(笑)、僕は逆に山本さんと一緒に仕事をして報酬にホタテやカキとか頂きたいところです(笑)。最後にまとめといっては何ですが、何か言い足りなかったことをまとめてお伝えいただけますか。

山本 体を鍛えることには、人それぞれの定義、哲学があると思います。私の場合は、サバイバルですが、皆さんはどんな哲学をお持ちでしょうか。きっと人と違う意識がそこにはあると思いますが、自分なりの哲学を持ちながら鍛錬をすれば、個性のある体が手に入ると思いますし、それ以上に、鍛錬がただの筋肉づくりではなく、人づくりになると思います。頑張ってくださいね!

  • 山本 圭一(やまもと けいいち)
    中学時代に独学で筋トレを始め、高校で本格的な筋トレと禅に取り組む。高校卒業後は自衛隊に入隊。その後、フィットネス業界に転身し、老舗クラブでの経験を経て、パーソナルトレーナーとして独立。著書「仕事ができる人はなぜ筋トレをするのか」は13万部を超えるベストセラーに。現在は、漁師の仕事をしながら、本来の生業である鍛錬家として勧善道場の運営を行い、雄勝町で暮らしている。

  • 小野寺 正道(おのでら まさみち)
    パワーラボ代表
    大学院博士課程在籍中にメディカルフィットネス施設の立上げに関わり、同ベンチャー企業でメディカルフィットネス事業担当取締役に就任。その後、独立して、IT企業、メーカー、人材会社、フィットネス事業者などで各種ヘルスケア関連の事業開発案件と産官学連携事業に従事している

フィットネス&ボディメイク情報誌
[ PHYSIQUE MAGAZINE 001 ]

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