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アレルギーを吹き飛ばせ! / 分子栄養医学管理士の星真理さんに学ぶカラダ作りの栄養学

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掲載日:2015.06.05


花粉症の季節になりましたね。「風邪かと思ったら今年から…」という方もいらっしゃるのでは?今回は花粉症を含むアレルギー色々についてお話ししましょう。


アレルギーの原因


アレルギーを起こすには原因となる物質があります。その物質の事をアレルゲンと言います。

① 食物アレルゲン → 胎盤、母乳などから入るケース
乳児の場合、腸粘膜が未発達、又は荒れている為に、通常では吸収できない大きさのタンパク質をアミノ酸まで分解出来ず、大きな大きさのものが吸収されてしまうことで起こります。乳幼児の食物アレルギーの多くは、アトピー性皮膚炎を合併しています。
2歳くらいの子供に起こる事が多いですが、栄養で改善します。子供のアレルギーの場合には、その食品が摂れない期間は別のタンパク食品で代用が必要です。でないと、成長に必要なタンパク質の量が確保出来ません。栄養量の確保=成長=消化管の発達=食べられるものが増える=更に成長です。消化管が成長して行くと、今までアレルギーを起こしていた食品に、アレルギーを起こさなくなる事も少なくありません。子供の頃にアレルギーのあった食べ物でも、成長するにつれて少しずつトライして食べられる様にするのがベターでしょう。消化吸収の過程が正常に機能しているとすれば、いわゆる食物アレルギーは発生しないことになります。もし成長して行く過程で、アレルギーを引き起こす食品の種類が増える様でしたら、それは成長に必要な栄養が食べられていない証拠です。

② 高エネルギー食、過剰糖質食、油の過剰摂取(リノール酸)など、バランスの崩れた食事
③ ダニなどのアレルゲンによる気道や皮膚などからの侵入
④ 皮膚が正しく作られない(栄養の摂取量が足りない)
⑤ ストレス → ストレスにより、皮膚血管が縮んで皮膚バリヤが正常に機能できない



アレルギーの症状




①皮膚症状 → ニキビ、湿疹、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎など
②気管支反応 → 気管支喘息
③眼 → かゆみ、涙、
④鼻 → 鼻水、鼻づまり、くしゃみ


最近は眼や鼻の症状が一度に起こる花粉症がひどくなっています。例えば気管支喘息は、喉(のど)から肺にかけての空気の通り道である気道(下気道)が狭くなり、発作が引き起こされる症状です。ひとたび発作が起こると息ができなくなり、酸素が不足して呼吸困難を起こします。気道が狭くなると、呼吸のたびに「ゼーゼー、ヒューヒュー」という喘鳴が起こります。

気道の中では、気道上皮という気道の中の表皮をはがし、そこにくっ付いたと思われるアレルゲンを引きはがして身体を守ろうとしているのですが、それを追い出すための粘液や、白血球などが気道の中に一気に満たされ、しかも気道自体も細く収縮しているのですから、空気の通れる隙間が無くなり、呼吸困難になってしまうのです。

鼻や眼も同じ様に粘膜です。鼻水や涙でアレルゲンを流そうとしたり、くしゃみで飛ばそうとしたりしています。また、鼻の中の粘膜には繊毛(せんもう)という細かい毛の様なものが常に動いて、異物を外に外にと運ぶ様に動いています。アレルギー状態にあるヒトの繊毛は、寝ていて活発に動いていない事が多い様です。

アレルギーが起きている時に体の中で作られる物質(化学伝達物質)にヒスタミンやロイコトリエンというものがあります。この物質が鼻水やくしゃみ、むくみなどを引き起こすので、薬剤でこれを出させない様にするのが抗ヒスタミン剤です。


皮膚バリヤの働き




皮膚は身体を覆う1枚の膜というだけではなく、1つの臓器として色々な機能を持っています。例えば、保護作用、体温調節、知覚作用、分泌排泄などです。

一番外側から角質層、顆粒層、有棘層、基底層、真皮、皮下組織となっていますが、角質層から基底層までの0.1〜0.2mmの厚さの層を表皮と呼んでいます。表皮をアレルゲン、微生物、紫外線など、外の刺激から守るためのバリヤ機能が必要です。それを発揮出来る条件が保湿です。

表皮は単なるバリヤ機能だけではなく、免疫調節作用があります。リポ多糖やペプチドグリカンという成分が皮膚の細胞を活性化させたり、抗菌ペプチドという物質を作って感染予防作用等を行ったりしています。

皮膚表面の角質層には、もともと天然の潤い成分( Natural Moisturizing Factor = NMF)があります。このNMFが水分を保持し、潤いを保ってくれています。しかし、加齢、ストレス、環境の変化などによって皮膚のアミノ酸の量が減ると、NMFがうまく作れなくなり、肌トラブルの原因になります。

アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎は、「アトピー素因(アトピー体質)」という、遺伝的にかゆみを起こしやすい体質のヒトが、さまざまな「アレルゲン」と「機械的刺激」によって起こる皮膚炎だと考えられています。しかし、殆どは遺伝ではなく、半分以上は栄養欠損と考えられます。ちょっとした刺激でバリヤ機能が壊れるとひどくなります。

帯状疱疹
帯状疱疹は、日本人の6人に1人がかかると言われている、とても身近な病気です。子供の頃に感染した水痘・帯状疱疹ウイルスが、細胞の中でこっそりと何年も過ごし(潜伏期)、加齢や紫外線等により、その人の免疫力が低下した頃を見計らって再活性化(回帰感染)します。つまり、5〜10歳頃に感染し、20代〜70代で回帰感染するのですから、身体の中で50〜60年も潜伏している事になります。
多くの場合、身体の左側か右側の、どちらか片方の神経に添って帯状に現れ、痛みを伴います。同じ様なものでヘルペスというのもあります。こちらは口の周りに発生しますが、部位が違うだけで発生の仕方は帯状疱疹と同じです。一番の予防法は、むやみに解熱剤で熱を下げない事、免疫を下げない様にする事です。

ニキビ
ニキビは、思春期に多く見られます。皮脂腺の発達よりも毛穴の発達が遅いため、増えた皮脂量に未発達の毛穴が対応しきれなくなり、毛穴に残った皮脂が詰まることで発生します。アクネ桿菌という菌が皮脂を分解する時に作り出す刺激物質が角化を乱します。アクネ桿菌に対抗しようとして白血球が防衛反応を起こす事で炎症が起こります。
多すぎる皮脂や、角化を乱す刺激物質を取り除き、菌を繁殖させない事が大切です。
皮脂のバランスを整えたり、正しい皮膚の分化を誘導したりするのはビタミンAです。ビタミンCと一緒に摂取しましょう。

腸性肢端皮膚炎
亜鉛吸収がちゃんとできない事で起こる遺伝性の疾患です。目、口の周り、手足、外陰部にひどい湿疹ができるのが特徴です。その他、小人症や感染しやすくなる、鉄欠乏性貧血などの症状が同時にみられる事もあります。
遺伝性では治しようがないと思うかもしれませんが、遺伝性でないアトピー性皮膚炎と診断される乳幼児湿疹の中には、単に亜鉛が欠乏して起こっている場合も少なくないと思われます。
難しい病気とあきらめず、まず身近な栄養(亜鉛、タンパク質など)をしっかり摂らせる事から始めてみてはいかがでしょう。

口内炎
口内炎の原因は様々ありますが、最も多いのは、アフタ性口内炎です。アフタ性口内炎は女性ホルモン(エストロゲン)に関係し、ビタミンB群が欠乏しやすい女性に多いです。 口腔内細菌の繁殖が起きている時は口内炎が長引き、ひどくなる事があります。
口腔内の粘膜の新陳代謝を高めてくれるビタミンB群、ビタミンA、亜鉛や、ラクトフェリン等の補給をしましょう。
皮膚・粘膜本来の生体恒常性を発揮させるためには、環境を整え、細胞の能力を最大限に引き出すことが重要です。そのためには、睡眠などの生活環境を整え、正しいスキンケア、そして栄養素をしっかり摂取することで、心身共に健康である事が重要です。


薬剤による治療法


ここで言う治療法とは、薬剤で行っている通常の治療法です。

① ステロイド剤(軟膏、経口)
② 気管支拡張剤
③ 化学伝達物質遊離抑制剤(抗ヒスタミン剤など)
④ 抗生物質


身体の中でヒスタミンやロイコトリエンといった化学伝達物質によって炎症を起こす物質(プロスタグランディンE2)が作られる時、同時に症状を抑える物質(プロスタグランディンE3)も作られます。これは細胞膜で作られますが、細胞膜の脂肪酸組成が変わるには4ヶ月程かかります。

アレルギーの症状が起こってからその組成を変えようとしても、変わる頃には症状のピークはとっくに過ぎてしまいます。人間は“のど元過ぎれば熱さを忘れる”生き物ですから、その時に「来年のために…」とは考えないでしょう。

薬剤はこの両方の物質を出させない様にしてしまうものが殆どです。即効性があるのでつい薬に頼りがちですが、身体本来の働きをブロックしてしまいます。そのため、頭がボーっとしたり、胃を荒らしたり、血管系の疾患が増えるなどの副作用が起こります。

一番大事な事は、
①アレルゲンを体内に入れない事。つまり粘膜のバリヤを強化する事。(タンパク質、ビタミンA)
②身体の免疫力を下げない事。(タンパク質、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンEなど)
③ひとたび入ってしまったときは、薬は最小限にして栄養(EPA、DHA、ビタミンEなど)をしっかり摂る事。栄養は食事だけでは難しいので、サプリメントをうまく活用する事。ただし、食事ありき。サプリメントに頼って食事をおろそかにするのは本末転倒です。

  • 星 真理(ほし まり)
    栄養整合栄養医学協会認定 分子栄養医学管理士
    栄養学の専門家として老若男女を問わず、一般人からトップアスリートにいたるまで、あらゆるニーズにも対応した栄養指導/栄養セミナーを個人、競技チーム、学校、企業を対象に行っている。
    著書「アスリートのための 分子栄養学」(体育とスポーツ出版社)

    分子栄養学(正式名称:分子整合栄養医学)
    Ortho-Molecular Nutrition and Medicine
    ノーベル賞を2つ受賞した米国人生化学者ライナス・ポーリング博士(1901〜1994年)が、栄養学と医学とを融合させて研究し、分子整合栄養医学として確立した栄養医学。

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