NFLを目指す東京ガールズ所属のチアリーダー 安藤美和さんのチアにかける想い
掲載日:2015.06.05
アメリカで断トツの人気を誇るプロスポーツと言えばNFL(National Football League)。そのNFLで試合に華を添えるのがチアリーダー。チアリーダーの世界でも最高峰はまさにこのNFLの舞台。NFLに限らずプロスポーツチームのチアリーダーは狭き門である。全米各地でそれぞれのチームでオーディションが開かれ、容姿端麗に加え、高い身体能力を持ち合わせた女性だけしかチームに属することができない。
世界最高峰の舞台に立つために、日本からもオーディション参加者はいることはいるが、渡航費、滞在費などの経費はすべて自分持ち。時間と経費をかけてアメリカ国内のオーディションに参加しても、受かる保証は全くなく、むしろ不合格の場合の方が多い。
今回ご紹介するチアリーダー・Miwa(安藤美和さん)は2012年タンパベイ・バッカニアーズに合格し1年間NFLのチアリーダーとして活躍をした。しかし、翌年のオーディションでは合格することができず、日本に帰国した。多大な経費がかかるアメリカでの生活は決して生易しいものではなくMiwaもその挑戦を諦めかけた。しかし、Miwaはスタジアムの中心で躍動していた自分の姿を思い描き、もう一度あの瞬間を味わうために、再び立ち上がった。そんなMiwaにインタビューをした。
初めて見たチアが忘れられず
—現在、日本でどのような活動をされていますか?
今は東京ガールズというチームに所属していて、チアリーダーの活動やボランティア、さらに東京ガールズがプロデュースしているバスケットボールチーム(東京エクセレンス)の応援などをしています。
—チアリーディングの練習はどのようなものなのでしょうか?
皆さんそれぞれ多忙で、練習時間自体は短いので、基礎トレーニングは各自自分でして、合同の練習の場では、ほとんどが合わせることに時間を使います。
—どのくらいの練習をしているのですか?
週2回で2時間くらい。水曜日は2時間、土曜日はもっと時間がとれて4〜5時間くらい練習できます。
—どういう場所で練習するのですか?
都内のゴールドジムでやっています。
—東京ガールズさんはゴールドジムさんがバックアップしてくれているんですね。
そうです。練習場所として空き時間にスタジオを貸していただいています。その代わりゴールドジムさんで行われるポットラックパーティや野球の応援などに行かせていただいています。
—メンバーの皆さんは他にどのような仕事をされているのですか?
キッズチアの先生をやっている人、あとは普通に会社員をやっている人もいます。メンバーの中には私と同じようにアメリカを目指している人もいるし、純粋にチアが好きで日本でやっていきたい人、それぞれです。
—チアに関する経歴を教えてください。
最初にチアを見たのは短大時代です。お友達に競技チアの大会に連れて行ってもらって、その時日体大が優勝したのですけど、その演技に衝撃を受けました。その衝撃から3ヵ月後には私は、日体大を受験していました。でも結果は不合格でその後就職しました。
でも、やっぱり日体大が忘れられなくて、次の年に再チャレンジして、ようやく合格できました。そしてすぐにチアリーダー部に入ったのが21歳。そこからかれこれ20年の歳月が経ってしまいました(笑)。最初短大に入学したのですが、物足りなくて、その後四年制に編入してチアも4年間続けました。その後、卒業してからも競技チアを続けて、さらには社会人の日産スカイライナーズというアメフトチームから誘われて、そこに6年間(2001年〜2006年)まで所属しました。残念ながらその後スカイライナーズは廃部となってしまったので、翌年2007年からは大阪のチームに移籍して、そこで4年間在籍しました。
—チアが本当に好きなんですね。
好きですね〜(笑)。大阪のチームはパナソニックなんですけど、そこは強かったですね。でも、そのチームにいた最後の年あたりからNFLを意識するようになりました。その頃「私はいくつになったらチアを辞められるだろう」と自問自答していて、最後はやっぱりアメリカに行くしかないと考えるようになりました。
そして次の年からアメリカのオーディションを受けるようになりました。でも1年目は結局どこも受からず帰ってきて、またパナソニックに戻りました。アメリカに行くためにはこれまでと違った経歴が必要になったので、翌年は新潟アルビレックスに移籍しました。
仕事はそのまま大阪だったので毎週末、大阪から新潟まで10時間かけて夜行バスで通っていて、それが一番辛かったです。金曜の夜は大阪からバスに乗り、新潟に朝着いたらすぐ練習。土曜の夜はお友達の家に泊めてもらって、日曜練習してそのまま夜行バスで大阪に帰る・・・そんな生活を1年間しました。
そして次の年、再チャレンジしたNFLに合格しました。でもその次の年はまた落ちて、日本に帰ってきました。
—オーディションは毎年受け直さなければならないのですか?
そうなんです。毎年オーディションです。その年は34人中15人くらいが落ちて、総入れ替えみたいな感じです。その後帰ってきて、ゴールドジムで働き始め、昨年1年間はどのチームにも属さず過ごしていましたが、それではダメと思い、今年東京ガールズに入れていただきました。
—学生の頃から今までずっとやっているんですね。
去年だけはできませんでしたが、その理由は前の年にアメリカに行ったので、お金をたくさん使ってしまったので、お金を貯めないとアメリカには行けないと思ったので、トレーニングは自分でやって、どのチームにも属さずダンスの練習とかをしていたんですけど、いざオーディションとなるとチアの勘が戻せなくて、やはりダメだと思いました。
—アメリカに行くにはやはり生活費が大変なのでしょうね?
車も買いますし、渡航費・・・とにかくたくさんお金がかかります。それに対して収入は一試合日本円で1万円くらいです、それが10試合だから、合計でも10万円くらい。貯金を切り崩す生活です。
—皆さんアルバイトをしながらチアをやるという感じですか?
いえ、アルバイトは禁止されています。もししたら日本に帰されてます。
—それでは生活は大変ですね
大変です。本当に大変です。例えオーディションに受かってもビザを取るために弁護士さんを雇うのに30〜40万円・・・。
—ビザを取るのに弁護士が必要なんですか?
はい、必要です。自分一人では取れないと思います。
—ビザの種類は何ですか?
エンターテイメントビザの一種でスポーツ選手や芸能人とかが取るビザです。これでないとNFLのチアリーダーにはなれないと言われているんです。
—しかし、たどり着くまでにいろいろな障害がありますね。
そうですね。皆受かってもビザが下りるのに時間がかかるので、それを理解していないチームの場合「そんな時間がかかるなら、やっぱりごめんね」みたいな対応をとられてしまい、実力のある子でも受かっただけで終わるケースがよくあります。あとはチームが望む人材でないと、いくら実力があってもダメということです。そういう意味では私はラッキーだったと言われています(笑)。
—いろいろ大変でもやはりアメリカでの生活に憧れるのですね?
いえ、私はアメリカでの生活が好きだった訳でもなくて、むしろ合っていないのかなと思うんです。今、アメリカでの生活を思い返すと楽しいよりもやっぱり辛いことの方が多かった気がします。でも、やっぱりあのスタジアムの、あの試合の感覚を思い出すとまた行きたいと思う。日本にいてもバスケットボールのチームだったり、ボランティアのイベントに行ったりしますけど、チアはどこでもやっぱり楽しいでのですが・・・。
—その瞬間をまた味わいたい、その一心なのですね。
はい、そうです。またNFLに行って味わいたいです。アメリカでの生活はボランティアも多いんです。ボランティアをしているからチアリーダーも認められているというか、ボランティア活動がメインになるくらいです。私はそういうボランティアの感覚を日本に広められたらいいなとも思っています。今はまだできてないですけど。
—アメリカでチアのチームに入っても、生活の保証はほとんど無いということですね。
ないです。住む家でさえも自分で探してくださいという感じ。
—オーディションはそれぞれのチームで独自に実施するものですか?
はいそうです。全米各地に点々とチームがあるので、オーディションのために移動するだけでも大変です。例えば、ニューヨークのチームだったら、ニューヨークでホテルをとって、会場まで行き、落ちたらまた別の地域に移動と・・・それだけでもお金がすごくかかります。
見つめる先はNFLのフィールド
—皆さんそれぞれどのチームに入りたいとかの希望があるのですね?
私は暖かいところがすきなので、フロリダとかが好きなんですけど、ユニホームがかわいいという理由でチームを選ぶ子もいます。有名なのはダラス・カーボーイズ。そこはもうオーディションもテレビ番組になるくらいのチームで、受かるまでが1ヵ月以上と、もの凄く時間がかかるんです。
—来年のオーディションはいつですか?
まだ、全然決まっていないんです。今まだシーズン中なので、来年にならないと決まらないくらいです。オーディションに来るのは大半がアメリカ人ですけど、どこへ行ってもアジア人枠のようなものがあるようですが、やっぱり最後は実力ですね。
—アメリカではいつでも自分一人で考え行動しているのですか?
そうです。情報は知り合いから聞くことはありますけど、決断するのは自分だけです。
—チアはチームワークが大切だと思いますが、知らないチームに入ってすぐにやれるものですか?
結構練習が多くて、キャンプなんかもあるのでみんなとすぐ仲良くなるので問題ありません。
—女性同士でケンカやイジメなどはないのでしょうか?
ないですね・・・裏ではあるかも知れないけど。私は2年前は英語が聞こえなかったから(笑)。今の東京ガールズはみんな仲良しです。というか、練習中忙しくて話す暇が全くない。やるのみ。ムダ話無し。
再びNFLの舞台に立ちたいという情熱だけで、多くの障害を乗り越えようと努力してる安藤美和さん。無邪気な笑顔を絶やすことのないその瞳は、いつでもキラキラ輝いている。
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- 安藤 美和(あんどう・みわ)
現在、東京ガールズ所属チアリーダー部に在籍した大学時代は、競技チア大会に出場し好成績を収める傍ら、アメリカンフットボールなど他競技の応援活動にも参加。 卒業後は、日産スカイライナーズ(2001〜2006)、パナソニックインパルス(2007〜2010)と10シーズンに渡り社会人アメリカンフットボールXリーグのチアリーダーとして活躍。2012シーズンにはNFLタンパベイ・バッカニアーズに所属した。
- 取材協力 :
- 東京ガールズ http://tokyogirls.jp/
ゴールドジム サウス東京 http://www.goldsgym.jp/
- TEXT & PHOTO :
- Yasu Nakajima
フィットネス&ボディメイク情報誌
[ PHYSIQUE MAGAZINE 004 ]
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