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ITでボディデザインをサポートする先駆者/森 俊憲

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掲載日:2015.06.05


  • 森 俊憲(もり・としのり)
    株式会社ボディクエスト代表。
    ネットを活用した独自のWEBシステムや専用アプリを開発し、受講者が自宅に居ながらマンツーマンの指導・支援を受けられるオンライン上のフィットネスサービスを展開。これまでに6,000名以上への体型管理カウンセリングやパーソナルトレーニングを行う。企業向けの健康指導や講演、各種メディアの監修・モデル等幅広く活動中。「へやトレ」(主婦の友社)、「読む筋トレ」(扶桑社)など著書多数。

  • パワーラボ代表
    大学院博士課程在籍中にメディカルフィットネス施設の立上げに関わり、同ベンチャー企業でメディカルフィットネス事業担当取締役に就任。その後、独立して、IT企業、メーカー、人材会社、フィットネス事業者などで各種ヘルスケア関連の事業開発案件と産官学連携事業に従事している。

大きな可能性を秘めたオンライン活用・パーソナルトレーニング
フィットネス/ヘルスケア関連事業にITを取り入れた新たなサービス提供について、数多くのベンチャーや既存の大手企業などが参入してきていて多種多様な形態がでてきている。成功しているところも数多く存在するが、その一方で何十倍もの死屍累々とした状況も存在している。個人の健康履歴管理(PHR)、ランニング・ウォーキング、食事記録・アドバイス、レシピ提供、トレーニングプログラム提供、トレーニング管理、専門家とのコミュニケーション、などなど。

フィットネス/ヘルスケア領域に限らず、既存ビジネスが抱えている課題をIT活用により解消していくところに、IT活用型ビジネスの重要な成功要因の一つがあるのはアマゾン、楽天、TKP(貸し会議室のオンライン予約サービス)といった例を出すまでもないだろう。

ボディクエストの主事業であるオンライン活用パーソナルトレーニングも同種のサービスが数多く出てきたが、その中で唯一と言ってもいい成功を治めている。森さんと長年お付き合いさせて頂いていて感じていた事だが、IT活用の本質が分かっていて、フィットネスサービスの本質が分かっていて、なおかつ、事業として軌道に乗せるところが分かっている、この3要素を一人で持っている稀有な存在なのだという事を今回の対談を通して実感させてもらった。

森さんは筋トレを心から愛していて継続している、IT活用の本質が分かっていて自らシステムの全体像を描く事ができる。事業家として本質的なところだが、収益を生み、自ら発展可能な事業として作り上げていけるプラットフォームとしてボディクエストのサービスシステムを構築してきている。

今後、このプラットフォームはダイエット/シェイプアップに限らず、多種多様なニーズを抱えている多くの人が最適なサービスを得られるようになる大きな可能性がある。スポーツ/健康への意識の高まり、スマートフォンの普及による環境の変化などの追い風を受けて、ちょうど新たなフィールドに入りより大きくなっていく段階で、適切なビジネスパートナーを得て羽ばたいていく直前なのかもしれない。




小野寺 サラリーマン層などの一般の仕事をしている人たちを対象にオンラインでボディメイクを指導するシステムを事業として行われている森さんに、続けて結果を出していく仕組みや、事業にかける思いなどを教えていただけないかと思っています。最初にサービスの概要を教えていただけますか。
森 そうですね。私は10年以上サラリーマンをしてから起業したのですが、新卒で京セラに入社して主にマーケティングを担当して、ある企画を持って当時のボーダーフォンに転職して、ソフトバンク買収でその企画が頓挫した事を契機に起業して元から好きだった筋トレとITを組み合わせた事業を作ってきました。筋トレ好きのサラリーマンとして一般のサラリーマンの生活を知っている事が他の方々との違いの一つになっていると思います。
小野寺 サラリーマン層を対象にした本も出版されていますよね。
森 はい。ハウツー本ではなく一般のサラリーマンが無理なく続けて成果を挙げていく方法について書いた『筋トレを続ける技術』(5月発刊)は3万冊以上売れています。他にもここ半年で6〜7冊は出ています。
小野寺 本の内容は?
森 一般の人にとって筋トレでシェイプアップはそそり立つ壁のようなものですが、そうではないという事を伝えています。まずは始めて、モチベーションを高めて、続ける、そして結果と。


小野寺 サービス内容は?
森 オンラインでのパーソナルトレーニングがメインになっています。その上で、オンラインでやりやすいシステムに作りこんでいます。 登録時に細かいカウンセリングを実施して、マイページが設定されてメニューが作成・提示されます。主に自宅でできるトレーニング方法を中心にプログラムを組んで、システムの向こう側にトレーナーがいるのをしっかりと感じさせています。例えば、ティップネスのオンラインフィットネスシステムはボディクエストのシステムです。昨今の状況もあって、ライフログメーカーからの問い合わせも多くなっています。創業してから8年で、利用者数は累計で6千人以上になってきました。
小野寺 雑誌『Physique』は筋トレ=ボディビルの狭い世界を広げていくのを一つの役目としています。アーノルドの時代は若い人の興味喚起もあって、フィットネスのブームへと発展していったのですが、ライフスタイルとしてのトレーニング、ボディメイクを提示するようにしています。
森 雑誌のフィットネスモデルはカッコいいしおしゃれですよね。私も例えばスーツを着た時の胸元のカッコよさ、というような適度に鍛えられたカラダの人がスタイリッシュな服を着ている姿のかっこよさをサービスの上でもイメージしています。
小野寺 森さんがトレーニングを始めた経緯はどのような感じだったのですか?
森 筋トレに目覚めたのはちょうど中学の時で、時代はDCブランドがブームの頃でした。『チェックメイト』などのファッション誌に出ているモデルがほとんど欧米人でかっこよく見えるんですが、普通の日本人が着るとかっこよく見えない、服に追いついていないと感じていました。で、ある時にモデルの首が太い事に気が付いたんです。たくましく見える理由の一つは首の太さではないか、骨格は変えられないけど、体を鍛えるといいのではないかと思い、中学から筋トレを開始したんです。
小野寺 なるほど、そうだったんですね。
森 筋トレする事がかっこよさに直結していて、筋トレで自己イメージの強化が可能ですし、いわゆるメンタル的な問題にも良いと思っています。筋トレをしていると、何になりたいの?とか、筋トレはダサい、とか言われたりしますよね。ただのナルシストでしょ、みたいに、自分ができないから頑張っている人を小馬鹿にするような事を言われたり。でも本当は、かっこいいカラダになって自己像を強化できて、例えば、少し肩が広がるだけで見た目のインパクトが大幅に良くなってきます。
小野寺 欧米の女優は首が長くて太い、首を支える僧帽筋もしっかりしていますよね。それが結果としてシンプルな姿でも良く見える根幹にあるのかもしれないと感じています。
森 そう、等身大の自分をかっこよくしないといくらデコレーションしても脱いだらただの人。頑張ってトレーニングすると結果がついてきますし、サボるとダメになる。そういう頑張った自分を誇りに思えるところがあると思っています。それに、トレーニングに特別な運動神経はいりません。やったらやった分だけかえってくる。だから、まずはやって欲しいんです。ホントに変われるのか?という疑心暗鬼の人の気持ちを引き上げて、3ヶ月、半年トレーニングを継続させてあげる。サービスのゴールはその人なりの運動習慣を一緒に見つけるところにあるんです。
小野寺 インプットさえすればアウトプットは自然とついてきますよね。
森 ナルシズムというのも、社会が認める存在という意味合いで、いわば社会におけるナルシズムというようなところはあると思っています。筋トレというと修行僧のような節制をしているというイメージを持っている人が多いですが、一般の人もカッコいいと思えるライフスタイルや美意識で、普通の生活をしていて筋トレもしている、ちょっと工夫するだけで体のシェイプアップにも健康にもつながるライフスタイルという事を示していきたいですね。その人のライフスタイルに合わせた内容を提供したいので、オンラインであってもマンツーマンのオーダーメイドのメニュー作りにこだわっています。自分に合っている内容なので続けられる、やってみようかという気持ちになれるんです。質問なども、相談という名目で受け付けるんですが、来る内容の6〜7割は報告で、例えば、こんなに頑張りました、とか。そこで、すごいですねー、でノッテくる(笑)。
小野寺 共有や共感を中心にしたコミュニケーションというところなのかもしれませんね。
森 相手が嬉しかったことや悲しかったことなどを共有して、褒めてもらいたい人には褒める。で、森さんのために頑張ります、という人も出てくるんです。競技スポーツではコーチのためにという様なところなのかもしれません。
小野寺 森さんの本を読んで、あの森さんに教えてもらえるんだという意識になっているのかもしれませんね。いわば、ファンになってくれた人が入ってくれて続けてくれる。
森 サラリーマン時代は本当に忙しかったんですが、筋トレが好きだったので一人で工夫していました。寮生活だったのですが、夜中に階段で腕立てをしたり、懸垂をしたり。遠回りした事もあると思うのですが、そういう工夫がノウハウにつながってきていると思います。元々できない人も多いと思うのですが、自分自身で失敗した事や上手くいったことを体系化して一般の人に向けてサービスを組み立てたのが役立つ仕組みをつながっていったのかもしれません。
小野寺 筋トレ好きというところと、京セラからボーダーフォン・ソフトバンクという経験が本当にうまく融合されていますよね。
森 自分が好きでやっているのが良いのかもしれませんね。理想の体型は人それぞれ持っているので、最初にそれを聞き出して、イメージを持たせるようにしています。「峰不二子のような体になりたい」っていうのでいいんですが、それすらイメージできていない人が多いですね。みんな違った世界だと思っていて、はなからこんな体にはなれないと諦めているんです。特別な難しい理論ではなく、普通の平易な方法で、初めて、続ける。ハイレベルなトレーニングは必要ないんです。ここから始めよう、で少し引き上げてあげる。忙しい人でもライフスタイルに合った筋トレで健康づくりに貢献できるんですね。


小野寺 サービス、特に継続して結果につなげていく工夫について教えていただきたいのですが。
森 そうですね。動画を中心にしたシンプルなeラーニングシステムとでもいった感じなのですが、トレーニングの良さや続けるコツなどを読んで実行していく仕組みになっています。いわゆるレコーディング的な機能もあります。
小野寺 一般的にモチベーションを高めて、続けるのは難しい事が多いですが、それをオンラインで実現できているんですね。
森 段階があります。まずは初期の効果実感、成功実感が大切です。リズミカルに運動を楽しめるようになると、腹筋に力が入ってくる感じがありませんか?とか、朝の起床が楽になっていませんか?などの効果を感じやすい事を示しています。何かを楽しいと思って、求めている方向に動いているという確信が芽生えてくると変わってきます。それと、体作りの全行程を見せてあげれば自信が無い人でも初めて続けてやすくなります。特に男は理屈を示して納得させるとやってくれる傾向がありますね。やっぱり、忙しい人は無駄な努力をしたくありませんので、やったらやった分だけ確実に成果が出る事を示す様にしています。加えて言うと、これ大変そうだというトレーニングは示しません。
小野寺 サービスは3ヶ月と6ヶ月で継続サービスはありませんが、それ以上は考えないのですか?
森 まず、マンパワーが足りません(笑)。本当は、マンネリ化してくるので短期間で集中して濃い時間を共有して卒業させる事にサービスを集中しています。
小野寺 期限がある事で頑張れますよね。
森 再入会する人もいるのですが、カリキュラムは変わらないとお伝えしていますし、実際に変わりません。ヒトから褒められることが無いので、ここで褒められるのが嬉しいという方もいらっしゃいます。絶対叱らない、褒め殺しですので(笑)。中には彼氏、夫を痩せさせてという方もいらっしゃいます。
小野寺 料金システムはどうなっていましたっけ?
森 スポーツクラブで半年間幽霊会員よりはるかに安く設定しています。
小野寺 オンライン上で言葉で支援して、無理やり背中を押せない。結果ではなくてプロセスを重視して、自己効力感を増す。本当にいいシステムですよね。
森 無理やりやらせるとリバウンドしますし、独り立ちできませんからね。


小野寺 もう一度お聞きしますが、事業アイデアはどのように作り上げられていかれたのですか?
森 私がサラリーマンをやっている事はまだブログも無かったんですが、自分でトレーニングに関するホームページを作って情報発信をしていました。毎日日記的に更新していたら、注目を集めるようになって、掲示板機能にコメント多くなってきたんです。そこで情報交換をしながら筋トレメリットをホームページにまとめていきました。コメントも好意的な反応が多く、まとめてくれてありがとう、という内容もあるので、これはコミュニケーション自体がサービスになる、ちゃんとしたパッケージを創ったらサービスになるのではないかと感じていたところ、自ら企画を持ち込んで転職した先のボーダフォンがソフトバンクに買収されてその企画ができなくなってしまい、温めていたイメージを基に創業しました。思いっきりフルスイングしてみようと思って始めたのですが、最初の2〜3年は苦労しました。
小野寺 そうだったんですね。
森 やっぱり説明型の商品ですので、2010年にサービスを伝えるために本を作りました。原稿はあったので、友人の出版プロデューサーに相談して、扶桑社に持ち込んだら1回目の打合せで出版が決まりました。世の中にハウツー本はいっぱいあるので、サラリーマンに読んでもらいたいという気持ちから、筋トレの魅力をとうとうと書いている本です。新幹線の東京・大阪間で読み切れる文量も想定していました。
小野寺 今後の展開はどのように考えていますか?
森 切口として筋トレはアンチエイジングになりますよね。それをもっと分かり易く伝えてあげると一般の人が大勢飛びつくのではないかと思っています。老化は身体機能に加えて姿勢などの見た目にも関わってきますが、そういう要望も増えてきているんです。ボディクエストで提供しているサービスはオンラインですので、自然とナレッジが蓄積されてきます。そこに価値が詰まっています。サービスの使われ方としては、ジムやフィットネスクラブに行く前の予備校的な入口ともなっています。多種多様なライフスタイルを持って、多種多様な目的を持っている人がいますので、あなたのためのメニューを考えてあげる、ここの価値は高いと考えています。今後は教える人の多様性も必要かもしれませんね。
小野寺 森さんと同じようにできる人はなかなかいないかもしれませんが、様々な経験とノウハウを持っているトレーナーの方々がこのシステムを使うともっと大勢の人たちの数多くの目的を達成に導く良いサービスを提供できるかもしれませんね。今日は本当にありがとうございました。

  • 森 俊憲(もり・としのり)
    株式会社ボディクエスト代表。
    ネットを活用した独自のWEBシステムや専用アプリを開発し、受講者が自宅に居ながらマンツーマンの指導・支援を受けられるオンライン上のフィットネスサービスを展開。これまでに6,000名以上への体型管理カウンセリングやパーソナルトレーニングを行う。企業向けの健康指導や講演、各種メディアの監修・モデル等幅広く活動中。「へやトレ」(主婦の友社)、「読む筋トレ」(扶桑社)など著書多数。

  • 小野寺 正道(おのでら まさみち)
    パワーラボ代表
    大学院博士課程在籍中にメディカルフィットネス施設の立上げに関わり、同ベンチャー企業でメディカルフィットネス事業担当取締役に就任。その後、独立して、IT企業、メーカー、人材会社、フィットネス事業者などで各種ヘルスケア関連の事業開発案件と産官学連携事業に従事している

フィットネス&ボディメイク情報誌
[ PHYSIQUE MAGAZINE 003 ]

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