筋トレ初心者こそベンチプレスでトレーニングをしよう!(1/2)
掲載日:2016.01.05
こちらでは、ベンチプレスの基本的なトレーニング方法として、6RM〜8RMの重量でインターバルを長めに取り、少ないセッ卜で全力を出す方法を紹介しました。この方法はフォームや力の出し方などを習得した、中級者以上を対象とした内容となっています。
当然、ベンチプレスをはじめたばかりの初心者であれば、フォームは安定していませんし、そうなると自分の力を出し切ることも難しくなってきます。そういった場合、まずはフォームを安定させ、しっかりと全力を出し切れるようになるためのトレー二ングを行う必要があります。
また、上級者になってくれば基本的なトレー二ングのような比較的高回数のいわゆる地力を上げるトレー二ング以外にも、神経系を強化する力を引き出すトレー二ングも必要となってきます。
ここでは、そういった個々人のレベル、ステップに合わせた卜レーニング方法を、児玉選手が実践、K'sジムで指導している内容で紹介していきたいと思います。
ベンチプレスにおけるステップ
【表1】ベンチプレスにおけるステップとそのトレー二ング
児玉選手が考える、ベンチプレスのトレーニングを行っていくうえでのステップを示すと、表1のようになります。STEP1〜STEP3までに分かれ、STEP1からSTEP2へ、STEP2からSTEP3へと順を追って移行していきます。
STEPごとのトレー二ング内容として、「STEP1がトレーニングA=慣れる卜レーニング」、「STEP2がトレーニングB=体を作る卜レーニング」となっており、STEP3に入るとその人のトレーニングの目的やトレーニング実施可能回数、または好みにより様々なパターンで卜レーニングを行うことになります。
◆ STEP2と同じように卜レーニングB=体を作るトレーニングを継続するパターン。
◆ 「トレーニングC=筋力・筋量アップ(地力アップ)」の基本的な卜レーニングを行い、定期的に「トレー二ングD=筋力アップ・神経系強化のトレーニング(力を引き出すトレーニング)」を行うパターン。
◆ 日によってトレーニングCとトレーニングDを分けて行うパターン。
◆ 一度のトレーニングでトレーニングCとトレーニングDを同時に行うパターン。
◆ 卜レーニングE=サイクルトレーニングやピリオダイゼーションなど一定期間内でトレーニングの強度やトレーニング内容を変えながら行うパターン。
以上のように、様々なパターンで卜レーニングを行うことになります。
なお、STEP3でのパターン分けはあくまである一定期間でのトレー二ングを示すもので、同じ人が常に同じパターンのトレー二ングを行うわけではありません。記録の伸びやその人の状態によって、様々なパターンの卜レーニングを行うことになります。
STEP1のトレーニング方法
STEP1=ベンチプレスをはじめたばかりの初心者のための卜レーニング方法を紹介します。
■トレーニングの目的:まずはベンチプレスに慣れること
STEP1の卜レーニングの目的はベンチプレスに慣れることです。このベンチプレスに慣れるということには2つの意味があり、1つは安定感を出すということになります。
当然ながら、ベンチプレスをはじめたばかりであれば、フォームは定まりません。周りから見れば一目でわかる、非常に不安定で危なっかしいベンチプレスのはずです。強くなることも大切ですが、まずはこういった不安定さをなくし、安全に卜レーニングを行えるようしなければなりません。
ベンチプレスに慣れる2つ目の意味は、ベンチプレスでの力の出し方を覚えることです。これはフォームが安定していないことも原因になりますが、根本的に力を出し切れない場合も多々あり、自身の持っている力を出し切れなければ、本来の自分に見合った強度でトレーニングが行えず、卜レーニングの効果も限られてしまいます。
こういったことがないように、STEP1の期間でベンチプレスでの力の出し方、力の出し切り方を覚える必要があります。
【左/写真1】STEP1のフォーム=ベタ寝ベンチ
【右/写真2】ベタ寝ベンチでの上体の型(横側)
■フォーム:ベタ寝ベンチで行う
STEP1でのベンチプレスのフォームは、肩甲骨を寄せず、腰にアーチも作らない一般的なベンチプレスのフォーム、ベタ寝ベンチのフォームで行います。【写真1・2】
この理由を、「初心者の段階でフォームを組んで卜レーニングを行うと、可動域が制限されてしまい筋肉が発達しにくいから」と思う人もいるかもしれませんが、そうではありません。
こちらでも述べましたが、パワーフォームを組んだとしても、通常はそれほど可動域も変わりませんし、それほど挙がる重量も変わりません。挙上の角度が少しデクライン気味になるだけでバーを胸に付くまで下ろすということは変わらないため、そもそも可動域が制限されるという考え方自体がおかしいのかもしれません。
パワーフォームを組まない理由の1つは、安定感を得るためです。
また、肩甲骨を寄せることで、拳上時の肩の関与を減らすことができ、肩の怪我を激減させることができるとも述べましたが、これは言いかえればベンチプレスに必要となる肩の筋肉の卜レーニングを、ベンチプレスで行えないということになります。
STEP1の期間では、フォームの安定感を得るため、またベンチプレスに必要な肩の筋肉をベンチプレスのトレーニングでつけるため、ベタ寝ベンチのフォームでトレーニングを行います。
■重量と回数:9RM〜11RMの重量で10回〜12回狙いのセッ卜を組む
STEP1では9RM〜11RMの重量で10回〜12回狙いのセッ卜を組みます。(基本は10回狙い)このような高回数でセットを組む理由は、低回数しか挙がらない高重量だとフォームが安定しにくいこと。そして、ベンチプレスを挙げるための筋力・筋量をつけることを目的としているためです。
■セット数:3〜5セッ卜、メインとなるセットは絶対に重量を下げずに行う
セット数は基本的には3〜5 セット、メインとなるセットは必ず同重量で行い、1セット目が70kg、2セット目が65kg、3セット目が60kgといったように、重量を下げながらセットを組むことはありません。
なお、基本的なトレーニング方法と比べてセッ卜数が多くなっている理由は、フォームの安定感を出す、力の出し方を覚える機会を増やすことを目的としているためです。
■インターバル:インターバルは前のセットの疲れが披けるまで
インターバルは基本的なトレーニング方法と同様に、毎回のセットで全力を出せるようにある程度長めに取ります。初心者の場合は力を出し切っているつもりでも出し切れていない場合が多いことや、上級者と比べて1セットでの疲労度が少ないこと考えて3分〜5分程度。
目安としては1セット目が10回、2セット目が7回といったように、セットごとで3回以上の差が出ないように設定します。
■補助種目:特に補助種目を行う必要はない
ベンチプレスの補助種目には、ダンベルプレスやディップス、フライなどがありますが、STEP1では特に補助種目を行う必要はありません。初心者の段階で多くの種目に手を出してしまうと、ひとつひとつのトレー二ングをただなんとなくこなしてしまう可能性が高くなってしまうからです。
まずはベンチプレスで力を出し切れるようになり、体を作る段階であるSTEP2に入ってから、地力の底上げとして補助種目を行うこととなります。
■他のSTEPとの違い:MAX挑戦を高頻度で行っても良い
STEP1の卜レーニングが他のSTEPのトレーニングと大きく異なる点が1つあります。それは1RM更新、MAX挑戦を積極的に行っても良いという点です。
「低回数しか挙がらない高重量だとフォームが安定しないと言ったばかりじゃないか?」こう思うかもしれませんが、MAX重量に挑戦する場合であれば、話は変わってきます。
10RM前後の重量でしかトレーニングを行っていない人が、突然1RM以上の重量を持つとなると、恐怖心などからフォームを安定させること、特にバーの軌道を安定させることは難しくなってきます。しかし、そういった重量を高頻度で持つことで、「本当の意味での軌道の安定」を得ることができます。
ベンチプレスをはじめたばかりの人がよくする質問としては、「バーのどの部分を握ればいいの?」、「重りを下ろすときのスピードはどれぐらいがいいの?」、はたまた「胸に付くまで下ろさないとダメなの?」といったことがありますが、最も多いのは「胸のどの部分にバーを下ろせばいいの?」という質問ではないでしょうか。
この質問に対して、「乳首の上〜みぞおち辺り」、「胸の一番高い所」といった答えが一般的な答えとなりますが、正しい答えとしてはやはり「一番重量が挙がる位置」となります。
初心者の段階で、ひたすら10RM前後の重量でトレーニングを行えば、自然に軌道を安定させるとことができるでしょう。しかし、そのトレーニングで得た軌道が、最も重量が挙がる軌道とは限りません。10RM前後といった比較的軽めの重量であれば、言ってみればどんな軌道で挙げたとしてもある程度は挙げることができます。
そうなると、知らないうちに自身が最も挙げやすい軌道とは違う軌道で挙げることを身につけてしまう可能性もあるわけです。
これに対して、MAX重量に挑戦する場合は、最も力が入る位置に下ろし、最も力が入る軌道で挙げるようにしないと、うまく挙げることはできません。自分のMAX重量に高頻度で挑戦すれば、「乳首の上にバーを下ろせばこの重量は挙がらないが、この位置に下ろせば軽く挙がる」、「バーをまっすぐに押すと軽く感じる」といった ように、自然に最も力が入るバーの下ろす位置や軌道を身につけることができます。またMAX挑戦を行うと神経系を刺激し、自身の持っている力を引き出すこともできます。
「フォーム(軌道)の安定」と「力を出し切ること」という、STEP1の卜レーニングの2つの目的を同時に達成できるわけです。
[ ベンチプレス 基礎から実践 ベンチプレスが誰よりも強くなる(VOL.1) ]