フィジーク・オンライン

正しく食品の選択ができていますか?インスリンの良い面と悪い面

この記事をシェアする

0
掲載日:2016.03.02


こちらの記事で、炭水化物から得られた糖を、体がどのように扱うかをみてきました。専門的には、インスリンに焦点を合わせてきたつもりです。ここでは、この興味深いホルモンのよい効果、悪い効果についてお話したいと思います。

インスリンの値は、血液中の糖の量が多いと高くなります。血液中の糖がどうして多くなるかというと、炭水化物をたくさん食べるからです。たとえ、その炭水化物が、食物繊維を多く含む、ヘルシーで自然なものであってもです。また、糖の多い食物、ジュース、単糖類全般を食べた場合にも、インスリンの値は高くなります。

インスリンの役割についてはすでに述べました。それは、血液から糖を除き、濃くなった血液中の糖を、正常値である70〜110 に戻すことです。インスリンが糖を血液から除く時、それは糖を後の使用のために蓄えておこうとします。

この余分な糖の貯蔵場所は三つあって、肝臓、筋肉、そして脂肪です。肝臓と筋肉が一杯である場合、余分な糖はすべて脂肪として蓄えられます。肝臓や筋肉にまだ蓄える余裕がある場合には、血液中の余分な糖は、筋肉か肝臓に蓄えられるでしょう。

しかし、インスリンの値が高いと、糖は、筋肉/肝臓と脂肪細胞の両方に蓄えられます。たとえ、肝臓と筋肉が一杯になっていなくてもです。

これは、なぜ食事を抜きがちな人が、たとえ食べ過ぎておらず、適度なカロリー摂取をしていたとしても、精製してある食品と糖の多い食品を食べることによって太ってしまう理由を説明しているのではないでしょうか。

たとえカロリーが過剰でなくとも、まちがった食物選択をしたり、一度にたくさん食べ過ぎたりすれば、インスリンの値は高くなるのです。つまり、脂肪が常に蓄えられるのです。



インスリンの値が高いと、食欲にも影響します。インスリンを注射されたネズミは、胃が破裂するまで食べ続けたのに対し、すい臓を除去されたネズミは、飢えて死んでしまいます。食べるのを拒んだからです。このように、インスリンは、その値が高ければ、食欲を刺激するのです。

インスリンの値が高いと、脂肪細胞に特別な効果を与えます。インスリンの値が高いことにより、リポプロテインリパーゼ(LPL)という酵素が分泌されます。

LPLは、脂肪細胞がエネルギーとして使われるために分解されるのを防ぎます。体は休んでいる時、常にさまざまなエネルギー源を使っています。この場合、主に脂肪がエネルギーとして使われます。

この脂肪は、食事からのものもあれば、蓄えられている体脂肪からのものもあります。カロリーの取り過ぎ、食物繊維の少ない食事、単糖類の摂取などでインスリンの値がいつも高いと、脂肪細胞はエネルギーとして使われません。

たとえ脂肪を落とそうとエアロビクスを行っても、食事がインスリンの分泌をコントロールするようなものでないかぎり、体重を落とすことは難しいことが分かるでしょう。

インスリンの分泌を行うすい臓はまた、それに対抗するグルカゴンと呼ばれるホルモンを分泌します。その仕事は、インスリンと似ています。つまり、血糖値を、70〜110 の間に保つことです。炭水化物が食事に足りない時にグルカゴンが分泌され、肝臓と筋肉の両方(炭水化物の貯蔵庫)へ、グルコースを供給するよう呼びかけます。

そして、筋肉と肝臓を刺激し、血糖値があまりにも低くなった場合に、糖を血液中へ戻すようにします。ですからグルカゴンは、インスリンと対抗するホルモンと言えます。両方とも体が血糖値を一定に保つ助けをしますが、インスリンは、糖を体内に蓄えるのに対して、グルカゴンは体内から糖を分解します。

さらに、インスリンは、脂肪細胞を脂肪で一杯にするように働くリポプロテインリバーゼの増加を促進しますが、グルカゴンは、脂肪を分解するように働くのです。グルカゴンは、ホルモン・センシティブ・リパーゼ(HSL)と呼ばれる酵素を分泌し、それは脂肪細胞に働きかけます。HSLによって、脂肪細胞は分解され、エネルギーとして使われることができるのです。

体は常に、インスリンとグルカゴンの両方を分泌しています。タンパク質と炭水化物からなる食事の後は、インスリンが主に分泌されます。グルカゴンも同時に分泌されますが、少量です。

食事と食事の問、血糖値が落ち始めた時、グルカゴンがその役割を果たします。あまりにも多くのカロリーを与える炭水化物の多い食事は、非常に多くのインスリンを分泌させるので、インスリンがグルカゴンの分泌を圧倒してしまいます。

適度なカロリーの食事でも、糖を多く含むものでは、同じことが起こります。糖はインスリンの働きによって血液から除去されます。そのうちのいくらかは、脂肪細胞に蓄えられ、インスリンの値が高いと、脂肪細胞からの脂肪の分泌を妨げてしまうのです。

そこで、タンパク質を炭水化物とともに取るようにしましょう。そうすれば、グルカゴンが分泌され、インスリンの脂肪蓄積作用のいくらかは打ち消されるでしょう。

  • 理論と実践で100%成功するダイエット ダイエットは科学だ!
    2008年10月10日第2刷発行
    著者:クリス・アセー卜
    発行者:橋本雄一
    発行所:(株)体育とスポーツ出版社


[ 理論と実践で100%成功するダイエット ダイエットは科学だ! ]

関連記事

筋トレ効果を高めるセルフケア/The Grid グリッドフォームローラー

筋トレ効果を高めるセルフケア/The Grid グリッドフォームローラー

三大栄養素だけでなく、微量栄養素が重要な理由 / ダイエットコーチに学ぶスポーツ栄養学

三大栄養素だけでなく、微量栄養素が重要な理由 / ダイエットコーチに学ぶスポーツ栄養学

食事の摂り方で体脂肪を燃焼させる<食事の回数を増やす&夜食に炭水化物を摂るべき?>

食事の摂り方で体脂肪を燃焼させる<食事の回数を増やす&夜食に炭水化物を摂るべき?>

有酸素運動でケアするべき筋肉/三橋 忠

有酸素運動でケアするべき筋肉/三橋 忠

関節と筋肉の機能を考慮したウォーミングアップ  (3/3)

関節と筋肉の機能を考慮したウォーミングアップ (3/3)

筋肉への栄養補給には、赤身の肉。髪への栄養補給には、牡蠣!?/益子 克彦

筋肉への栄養補給には、赤身の肉。髪への栄養補給には、牡蠣!?/益子 克彦

サプリメント研究の世界的権威を持つ Dr.マウロ博士とは?/サイモン・デュー

サプリメント研究の世界的権威を持つ Dr.マウロ博士とは?/サイモン・デュー

脂質の主な種類とその働きは6つに分類される!

脂質の主な種類とその働きは6つに分類される!