脂肪について知ろう!中性脂肪と脂肪酸の性質と働き
掲載日:2016.03.18
こちらの記事で、脂質の主な種類とその働きについてご紹介いたしましたが、今回は、「中性脂肪(卜リアシルグリセロール・TG)」と「脂肪酸(R-COOH・FA)」についてご紹介します。
中性脂肪(卜リアシルグリセロール・TG)
中性脂肪の構造は、グリセリンという物質に炭素の鎖がつながった形をしています。鎖が1本のものをモノシアルグリセロール、2本のものをジシアルグリセロール、3本のものをトリシアルグリセロールといいます。
モノは数字の1、ジは2、トリは3を意味しますから、名前は長いですが想像つきますね。
1、2、3それぞれ働きは異なりますが、通常は3のトリアシルグリセロールを中性脂肪と呼んでいます。中性脂肪を単に「脂肪」と呼ぶ時もあります。
中性脂肪は酸やアルカリ、酵素などで加水分解され、グリセロールと脂肪酸に代謝されます。
脂肪酸(R-COOH・FA)
脂肪酸は、炭素が長く繋がった鎖に水素原子が結合した形をしています。結合の形によって飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分けられます。
その名の通り、構造上飽和しているものを飽和脂肪酸と呼びます。飽和している脂肪は冷えると固まる性質を持っています。バターやラードなどがその代表です。
一方、不飽和の脂肪は冷えても固まりません。冷蔵庫に入れても固まらない、植物性の不飽和脂肪酸の代表格はリノール酸やリノレン酸です。植物や種子などに含まれるものが多いですね。
動物性では魚油などに含まれる事が多いエイコサペンタエン酸(EPA)やアラキドン酸なども、不飽和脂肪酸として有名です。
不飽和脂肪酸は構造上、二重結合という形の部分があります。それは言ってみれば“空の手”がある様なもので、酸素と結びつきやすい形をしています。ここに酸素が結びつくと、酸化した脂となります。“不飽和脂肪酸は酸化しやすい”と覚えて下さい。
また、不飽和脂肪酸は休内で作れないものが多いため、必須脂肪酸と呼ばれています。
不飽和脂肪酸は、その形によって名前が違うように、働きも随分違います。二重結合の位置によって、ω (オメガ)6系とかω3系とかと呼ばれ分類されています。
従来、ω6系のリノール酸は、唯一の必須脂肪酸と理解され、またコレステロール低下作用が強調されていたため、現在は過剰摂取になりがちで、むしろそれが問題になっています。
皆さんの中にも、植物性の脂肪は皮下脂肪や内臓脂肪にはなりにくく、動物性の脂肪は見た目の通り皮下脂肪や、ドロドロ血液の原因になるような気分がする方が多いのではないでしょうか?
それは実は、単なる気分の問題なのです。戦後の日本の健康指導は、
① カロリー制限
② 糖質制限
③ アルコール制限
④ バターはNG、マーガリンはOK
⑤ 野菜を沢山摂る
⑥ 運動する
⑦ 肉はNG、魚はOK
といった内容でした。これによってコレステロール値を下げて心疾患を予防する、というのが目的だったのです。
ところが、それによってコレステロール値をコントロールしたところ、実際には心疾患での死亡率が上昇した、という驚くべき結果が15年もの追跡調査で分かりました。
しかし、前記の①〜⑦の全てが悪いという訳ではありません。
ここで関係しているのは④と⑦、つまり“脂肪摂取のバランス”だったのです。
体内でコレステロールが沢山存在するところは、脳と神経です。脳のレセプターの材料であるセロトニンという物質が低下すると、うつ症状が出ます。
最近では、コレステロールの低下とうつ病の関係を調査する研究が盛んに行われています。この事からも、コレステロールの摂取は、ただやみくもに減らせば良いという訳ではない、という事が分かります。
[ アスリートのための分子栄養学 ]