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ミスター・オリンピア Mark Anthony ポージングセミナー リポート

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掲載日:2016.01.29


2016年1月23日(土)、2013年ミスターオリンピアに輝いた初代メンズフィジークチャンピオン“Mark Anthony(マーク・アンソニー)”のポージング・セミナーが新宿角筈区民センターで開催された。

歴代ミスターオリンピアは、マークとジェレミー・ブエンディアの二人。初代メンズフィジークチャンピオンであるマークは、メンズフィジークの礎を築いたといっても過言ではないだろう。実際に彼を目標にして、第二回、第三回のオリンピアに出場するフィジーカーも多く存在するのだ。

海外コンテストといえば、賛否両論がある薬物・ドーピング問題。しかし、マークは今まで完全ナチュラルを貫いているという。さらに、マークの父はアジア人(香港)であり、決して体格に恵まれたというわけではない。ハーフとして、より日本人に近い感覚を持っているといえるのではないだろうか。ミスターオリンピアに輝いた時も体重は80kg弱だったという。

今回のセミナーでは、フィットネス大国アメリカのコンテストでも通用するポージング指導を受けることができた。

 

大きな歓声と共にマークが登場




こんにちは、マーク・アンソニーです。今日は、アメリカのアマチュアフィジークのポージングにフォーカスします。

今日は、コンテストを経験された方もそうでいない方も、フィジークに求められるポージングの評価において、皆さんが学んできたものを見せてもらい、それから僕のポージングを見せます。逆に僕から見ると、経験のない人は癖が全くないという意味では良いスタートがきれると思います。

メンズフィジークは、とにかく全体的な評価となりますので、身体のコンディションと同じくらい表現力もとても大切な事だと思います。

コンテストでは、ステージに立つとコールアウトと呼ばれるピックアップ審査をされますが、通常ですと5人ピックされます。その時、僕のまわりに数名の選手がいますが、やっぱり僕は2番目3番目にはなりたくない。

選手は皆一位を狙っているので、その場面ではいかに今のポーズ、次のポーズというトランジッション(移行)を上手くするかによって評価が変わってきます。




僕の経験から言えることは、僕よりも仕上げて来ているのに、僕の方が順位が高かったということがあります。それは、僕のプレゼンテーションのほうが良かったということになりますので、とにかくジャッジの目から見て、“綺麗・良い”という部分で、その時僕は勝つことができたのだと思っています。

先ほど総合評価と言ったように、足の先から頭の先まで全て見られているので、頭の動かし方、顔の表情全て連動しています(評価の対象になっています)。

身体の見せ方ですが、仕上がりだけでなく、いかにスムーズに身体を見せるか、力を入れ過ぎたりすると逆効果となるので、スムーズさも評価の基準となってきます。

ポージングで何ができるかというと、観客やジャッジに対して自分の強みを上手く引き出したり、逆に自分の弱みを隠すということがポイントとなります。そういったことが、メンズフィジークに求められる評価となります。

 

IFBB PROマークによる実践ポージング


向かって左からステージインした選手たちにアドバイスするマーク


入場と言うのは、審査員や観客に対して一番初めに印象(インパクト)を与える瞬間です。そのイメージが完全にジャッジに残ります。

皆さんのポージングは全体的に良かったのですが、急いでいる感じの人が多かった。できたら右肩を引いて、そこにいる審査員をなるべく見ながら歩きます。例えるなら、馬をイメージしてゆっくり品のあるような感じです。センターでは、「皆さん僕を見て下さい」という場所です。


感覚を掴んでもらうために、参加者の目の前でポージングを披露する


今みたいに、水が流れるようなスムーズというのはこういうことです。できるだけ、筋肉を見せるという意味で止まらずに、でも一瞬だけ止めます。


参加者一人一人に対して丁寧にポージングの動きを伝える


もちろん、個性というのは皆さんそれぞれ大切にしてほしい。だけど、アドバイスをすると、もっと他の人と差をつけてやるといい。見せたいポージングのワンショットをとったら、そのあとトランジッションとなるといいかもしれません。


マークのポージング。流れるようなトランジッションはとても美しかった

 

質疑応答で垣間見えたマークの強さの秘密




— ボードショーツはどのようなタイプを選べばいいですか?
アメリカでは、ボードショーツとは水着のことです。格闘技の際に着用するような類似モデルはお勧めしません。そして色についていうと、ピンクは絶対に選ばないで下さい。自分がヘッドジャッジだったら、ピンクを着ていた時点で落とします。なぜならフィジークとはいえ、力強さを競っているのでピンクはマッチしないと思うからです。

考えてみて下さい。もともとボディビルからこのカテゴリを作り、「フィジークなんて筋量が少なくて柔らかいイメージだ。」という人も中にはいる。それだけで甘く見られているかもしれないのに、そこでピンクを着ていたら・・・フィジークとは強くて大きいというイメージでポピュラーな競技にしていきたいので、力強い男というイメージを作っていきたいと私は考えています。

あと、柄の多いタイプはビーチで着るのはいいと思うけど、競技では柄がごちゃごちゃしていないタイプをお勧めします。僕は、単色使いのタイプが好きですが、最も大切なのは、自分に似合う色を鏡の前で着て見て確認しすることだと思います。ボードショーツは自己表現の一つとなります。

— どのような髪型にすればいいですか?
特にやってはいけないというスタイルはないけど、変に頭が大きくみえるようなスタイルはやめたほうがいいと思います。

髪型も自分の性格やスタイルの一つです。僕のコーンロウスタイルは、なかには好きではないと思う人もいるかもしれない。でも、それが自分のスタイルだから貫き通すよ。


個人それぞれに合った動きを丁寧に指導する


— ピックアップ審査の際、どちらの脚を前に出すべきですか?
必ずしもこうしろというのはありませんが、誰かと比較される場合は、自分にとって自信がある方を前にすればいいと思うよ。真っすぐ同じ状態で立つよりは、アングルをつけて動かしてみてもいいと思うし、違う筋肉やパーツを見せることができるのでいいと思います。


真剣な面持ちでステージ上にいる参加者のポージングを見つめる


— ステージの上での目線、そしていかに自分をアピールするには?
僕はただ、ジャッジを見ています。しかも、左から右全てのジャッジに見過ぎって思われるくらい、視線を反らしたいと思われるくらい見るよ。(笑)

そして、あまり良い例ではありませんが、「ここは俺のスペースだ!」って主張するようにスペースを確保することがあります。相手に対して「俺は勝ちに来ているんだ!」というのを見せています。だから、もちろん隣の選手も僕を押してくることがあります。

— ステージの上では何を考えていますか?
「ここまで数ヶ月間、ささみだけを食べ続けずっと準備してきた。今日の為に絶対勝つんだ」ということをステージで考えています。(笑)


本番さながらのポージング。ポーズをキープし続けるのも至難の業だ。


— 身長が低く小柄なため、ネガティブな気持ちになってしまう。
僕だって身長の高い白人を相手にしなければいけませんので、ネガティブになる必要はありません。そもそも、ステージに立った段階で、自分は強いと考えなければいけません。自分は何をすべきかを考えてステージに上がります。そして、自分の表現力によってジャッジに自分は何が強いかを見せ、弱い部分は上手く隠します。

よくインタビューできかれるのが、「誰に一番勝ちたいですか?」という質問ですが、実際に僕は今日は誰と戦うのか知りもしないし、調べもしない。

バックステージにいるときも、音楽を聴きながらポージング練習に集中して、自分の番号が呼ばれるのを冷静に待っています。他人を気にする必要はありません。

— 小柄な人が、なるべく大きく見せるコツはありますか?
身体つきは変えられません。今現在のミスターオリンピアは、おそらくあなたと同じくらいの身長です。彼は賢いので、どのアングルが一番大きく見えるかを知っています。彼の武器は胸だと思うので、それを大きく見せるポーズをしていると思います。

さっきも言ったように、どちらの足を引くかによって身体の大きさやバランスが異なって見えることもある。彼は、何度も練習を繰り返して、自分が大きく見えるポーズを研究しています。自分がどういうポーズをしたら強く見えるか、評価されるかというのを常に練習している。

腹筋を正面に向けるよりも、ウエストにアングルをつけることによって肩幅が大きく見えるわけですから、そういうにアングルを上手く使って身体を大きく見せることが必要です。


競技者だけでなく、指導者としても世界で活躍するマークの情熱的な指導


— 大会当日のパンプアップにかける時間を教えて下さい。
ジムに行ってる人は感じたことがあると思うけど、パンプしてもそんなに長く続かないでしょ?ステージ裏で20分くらいやっている人も見かけますが、自分は10分くらいゆっくり落ち着いてやってるよ。

特に胸を強調するパンプで、色んな部位は行いません。サイド、ショルダー、バイセップスとか、胸と肩が張っているのがジャッジが一番印象を受けると思うので、そこだけパンプさせるイメージです。

そして、軽いウエイトでコントロールします。大会当日は緊張しているだろうし、あまり汗もかきたくないので、ゆっくりプッシュアップしたりしています。

 

報道陣に語ってくれた今後のビジョン




— 2016年の目標を教えて下さい。
2015年はオフをとりました。オリンピアに向けての準備として一年半かけてオフをとりました。そのため、2016年は自分のタイトルをもう一度取り返すということを目標にしています。とにかく、オリンピアの大会当日に向けて準備しています。

僕には5人のコーチがいます。彼らにはそれぞれ担当があって、ニュートリション指導、トレーニング指導、あらゆるメニューの管理、マッサージ、ストレッチ等を行うコーチがいます。あとはスポンサーからも、食事やサプリメントのサポートをしてもらっています。

車に例えたら、フェラーリのようなメンテナンスをしています。ですが別に、威張ってこれだけいるんだよと言っているわけではなくて、あのミスターオリンピアを獲るにはこれだけ必要だということなのです。

— その年や大会によって流行等があり、多少審査基準が異なる場合があると思うのですが、どのようにカバーしていますか?
逆に僕はそれを気にしません。僕が一番最初にミスターオリンピアを獲り、メンズフィジークのスタンダードを作ったと思うので、僕はそれを貫き通すつもりでいます。何かや誰かを後から追いかける、流行に合わせて追っていくというよりは、自分がリードしていくというスタイルをとっています。

僕は現在36歳ですけど、24歳くらいの人たちを相手に戦わなければいけませんからね(笑)


2013年ミスターオリンピアに輝いた時のメダル


— 新たなカテゴリとして創設されるクラシック・フィジークについてどのようにお考えですか?
そのカテゴリーを作ったのは、すごく良いアイデアだと思う。なぜなら、それにマッチする競技者が増えるからです。ボディビルという業界をもう一度成長させるいいきっかけになると思っています。

例えば、僕は今日本にいて、このセミナーでこれほど多くの人たちがいますけど、彼らはサイズも小さいです。 おそらく幼い頃からボディビルダーに対して少なからず興味があってここまできたんでしょうし、そういうい意味では、このクラシック・フィジークという新しいカテゴリが彼らの競技者としてステージに立つチャンスを貰えているんだと思います。

いきなりボディビルに挑戦しようとなると、一般的な日本人にとってはかなり敷居が高いイメージがあると思います。フィジークっていうと、最初はボディビルまでのステップというイメージだったんですけど、今はそれぞれ独立した競技としてオリンピアでも採用されましたよね。そういう意味で、競技人口を広めることができると思います。

どちらかというとボディビルまで筋量を増やせない、自分はそこまで大きくなれない、という人たちにとって、フィジークとかクラシック・フィジークという違うカテゴリを作ってくれることによって、ボディビルという業界が広がる機会に繋がっているんだと思います。

— 過去にボディビルダーとして活躍していましたが、再度ボディビルの大会に出場する予定はありますか?
まずは2016年オリンピアのフィジークに出場したいです。でも常に心はボディビルダーだと思っています。自分が何に向いているのか、何が自分の強みとして表現できるかは、自分のなかで理解しています。それは、フィジークだと思っています。もう一度タイトルを獲ったあとは、もしかしたらもう一度ボディビルも考えるかもしれませんね。

— フィジークとボディビルの違いはなんですか?
全く同じです。血の滲むような努力で汗を流すという意味において全く変わりません。何か改善しなきゃいけないとか、一位を獲るとなると、他の人が努力できないほど努力し続けるのは変わらないと思います。


ポージング・セミナー参加者


今回このセミナーを主催したのは、ボディビル、フィジーク、ビキニを始めとした、フィットネスを愛するアスリート団体、一般社団法人NPCJ。冒頭の挨拶で庄司会長はこのように語った。

“日頃から競技者としてレベルアップを目指す方々は、本場(アメリカ)の指導を受けたくても様々なハードルによって断念する人が多くいます。そこで、今回はマーク氏を日本に招き、皆さんの競技の質の向上を目的としてこのようなセミナーを開催しました。”

今後NPCJでは、メンズフィットネスモデル部門というカテゴリが、新たに導入となる。このカテゴリでは、タンクトップやジーンズ、またはそれに準ずるウェアとシューズを着用して競う新しいスタイル。つまり、今までの常識では考えられなかった胸部や腹筋を見せずして競うこととなる。

庄司会長は、このカテゴリを導入する運びとなった背景に、「コンテストに出場することが目的ではないが、日頃からトレーニングをしているという人は日本にも多く存在する。彼らにとってボディビルという究極なところまで辿り着くには時間がかかる。だからこそ、そこで入口を狭めるのではなく、ステージの上に立つということを経験しコンテストに出場する楽しさを知るきっかけになってほしい。そして、コンテストに出場することを目標に、普段のトレーニングを励む活力となることを願っています。」と熱く語ってくれた。


近年、フィジークやビキニ競技者人口は増加傾向にあり、益々の盛り上がりを見せる国内コンテスト。各地で開催されるコンテストから誕生するアスリートに今後も注目していきたい。
 
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