「腕立て伏せ」と「ベンチプレス」トレーニング効果の違いとは?
掲載日:2015.10.13
筋肉の強化方法として次のようなことがしばしばいわれます。
「脚の筋肉のトレーニングとして、うちの選手にはトレーニング場のマシーンでレッグエクステンション(座った状態で脚の曲げ伸ばしを行う種目)を行うように指導しているので脚の筋肉強化は十分だと思っている。だからスクワット(バーベルを担いでバランスを取りながらしゃがむ、そして立つという動作を繰り返し行う種目)を行なう必要はないと思う」
はたして本当に、この言葉の通りでよいのでしょうか。
確かにこの方法は、脚(大腿四頭筋)の強化のみを目指した種目としては間違いではありません。しかし、求める効果によってその実施方法や種目の選定が変わってもいいはずです。
スポーツ競技においては、そのほとんどが、屋内でも屋外でも身体に重力がかかった状態(脊柱に負荷を感じて)で運動をしています。そしてその重力に対して体のバランスを取りながら、あるいは逆らいながら力(筋力の発揮)を出すという形になります。この時、脚の筋力の発揮は自身の体重を支えながら(バランスをとりながら)の動作になるので、体が固定された状態での脚筋力の発揮ではありません。
その点、スポーツ競技では、このように協同で、筋力発揮をする場面が多くあるということを考えていくと、単関節運動(膝関節)であるレッグエクステンションと複合関節運動(膝関節と股関節)であるスクワットを比較した時、股関節の伸展をも行うスクワット種目の方が、スポーツのための筋力トレーニングとしては適しているのではないかと思われます。
また、この二つのトレーニング種目は動作の形態も異なりますが、トレーナーとしての私たちの実施経験上、レッグエクステンションよりもスクワットの方が、純粋に脚筋力を上げるうえで効果が高いと言う実感もあります。
その他、上半身の代表的なトレーニングの種目の中にベンチプレス(主に大胸筋を強化します)という種目がありますが、これについて「うちのチームではベンチプレスの代わりに腕立て伏せをやっているから大丈夫」という声もよく耳にします。
しかし、ベンチプレスという種目はベンチプレス台に仰向けに寝てバーベルの挙げ下げをする種目であるのに対して、腕立て伏せはうつ伏せの格好で腕の曲げ伸ばしを行う動作であるという違いがあります。
またベンチプレス種目では主に大胸筋の強化を目的として、バーベルを持つ握り幅を肘関節が直角になるようにして実施するので、一般的な腕立て伏せとでは強化する部位が異なります。ただし一般的に知られている腕立て伏せは両腕の幅を肩幅と同じ幅にして行いますので、その点肘関節の曲がり角度を同じにすれば、ベンチプレスと同一筋肉部分のトレーニングを行うことができるといえるでしょう。
しかし、一番の問題は実施する負荷の違いにあります。
トレーニングにおいては、少しずつ負荷を強くしていくという法則(これを「漸増性負荷の法則」といいます)があります。その法則の観点から見てもわかるように筋肉はある一定の負荷に対して、刺激を得られなくなった時点でその成長が止まるという性質をもっています。その点、腕立て伏せには30RM、40RMできるようになっても、負荷を強くする明確な方法がないというのが実情です。
また、現状として何kgの重量を使用しているかという点においてもハッキリしないので、目標設定や、そのときの負荷強度の目安が立たないということも欠点として上げることができます。
ここで述べたいポイン卜
1.スポーツ強化のためのトレー二ング種目は、単関節運動よりも複合関節運動を基本として導入する。
2.負荷の測れない種目は、簡易的な種目という感覚で導入する。
3.スポーツ中の動きにおいては「何かに体が固定されて」とか「軌道が一定」という場面は少ない。
1.スポーツ強化のためのトレー二ング種目は、単関節運動よりも複合関節運動を基本として導入する。
2.負荷の測れない種目は、簡易的な種目という感覚で導入する。
3.スポーツ中の動きにおいては「何かに体が固定されて」とか「軌道が一定」という場面は少ない。
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