ウエイトトレーニングとスポーツパフォーマンス向上の関係性
掲載日:2016.06.07
ウエイ卜卜レーニングの必要性
スポーツ選手がウエイトトレーニングを行う目的は、①スポーツのパフォーマンス向上と②傷害の予防の2つに集約することができます。
ウエイトトレーニングの代表的な効果としては、エクササイズの挙上重量の向上や筋肥大などがあげられますが、選手のレベルや試合シーズンに応じた計画的なウエイトトレーニングプログラムを長期にわたって実施することによって、これらの効果をジャンプ力やダッシュ力、アジリティー(敏捷性)の改善など、各種スポーツのパフォーマンス向上に役立つ身体能力の改善へと結びつけていくことができます。
また、ウエイトトレーニングによって、筋力を強化したり安全で効率的なフォームを身につけることができ、スポーツ競技におけるさまざまな傷害を予防するのに役立ちます。
トレーニングの指導にあたっては、トレーニングはなぜ必要なのか?トレーニングを行うことによってどんな効果が得られるのか?などについて、選手に対して機会があるごとに具体的にわかりやすく伝えることが大切です。
選手自身がウエイトトレーニングの必要性やメリットについて正しく理解することによって、トレーニングへの取り組み姿勢が改善されていきます。
競技力のピラミッドを理解する
体力トレーニングやコンデイショニングの重要性について、選手にわかりやすく理解してもらうために、選手の競技力を三角形のピラミッドに例えて説明する方法がよく用いられています。
ピラミッドの高さは選手の競技力であり、高いほど強い選手ということになります。このピラミッドは、基盤となる低層部は体力、中層部は技術、上層部は戦術というように3つの要素で構成されています。
例えば、バスケットボールのダンクシュート(技術)は、一定レベルのジャンプ力(体力)がないとできず、体力は技術の制限因子となっています。また、バスケットボールにおいて、ドリブルやパス、シュートといった基本的な技術が十分できない選手には、高度なチームプレーや戦術を実施することができません。
その一方で、一人一人の選手の移動スピードやパスのスピードが向上すれば、より高いレベルの戦術ができるようになります。体力が向上すれば、技術や戦術も必ず向上するというわけではありませんが、体力の向上は、よりレベルの高い技術や戦術を身につけやすくするものであると理解し、向上させた体力をパフォーマンスに生かす橋渡し的なトレーニングを計画的に実施するように配慮することが必要です。
また、体力が向上したら、これに見合った技術や戦術を開発することが必要となる場合も考えられます。
年齢やレベルに合った長期にわたる計画的トレーニング
図2-2は、選手の競技力のピラミッドが体力トレーニングや練習によって変化していく過程の概念図です。体力トレーニングをほとんど実施せず、技術や戦術の練習のみを行った場合、図の左側のような底辺が狭く縦に長いピラミッドになってしまいます。
これは、狭い敷地に無理矢理高い建物を作ろうとしている状態に似ており、高くしようとすればするほど不安定になり、崩れやすくなってしまいます。
中高生レベルのジュニア期に、体力基盤を作る基本的な体力トレーニングやコンデイショニングを行わなかった選手の場合、縦長のピラミッドのような状態となり、大学や社会人へと進んでも、競技力の向上が頭打ちになりやすく、有能な選手も小さなスケールにとどまり伸び悩んでしまうと考えられます。
また、適切なトレーニングやコンディショニングを行っていれば起こさなくても済んだケガによって、将来の競技力の向上が妨げられる可能性も高いと考えられます。
一方、長期的な展望のもとに、レベルに応じた段階的な体力トレーニングを積んできた選手の場合には、底面積の広々としたスケールの大きなピラミッドが構築され、安定性があって崩れにくく、将来もまだまだ高いレベルの技術や戦術を獲得できる可能性も高くなると考えられます。
[ 競技スポーツのためのウエイトトレーニング ]