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筋トレ初心者こそベンチプレスでトレーニングをしよう!(2/2)

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掲載日:2016.01.08
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■実際のセットの組み方
それでは具体例をあげてセットの組み方を紹介します。

MAX重量=80kg
10RM=60kg
セットクリア条件=3セット10回挙げる

このような人がセットを組んだとすると、表2のようになります。

【表2】実際のセットの組み方


まず、ウォーミングアップは基本的なトレーニングと同様にMAX重量の50%以下からはじめ、2セット〜4セットほど。フォームがベタ寝ベンチのため、パワーフォームほどウォーミングアップを行う必要はありません。筋肉が温まれば大丈夫です。

次に、MAX挑戦を行いますが、挑戦する前にMAX重量の90〜95%の重量を、MAX重量を持っていると想定しつつ持ち、その後に現在のMAX重量を持ちます。それが挙がれば、調子次第でその上の重量、MAX挑戦を行うことになります。その聞のインターバルもメインセット同様、疲れが抜けるまで取ります。

MAX挑戦の後に、メインセットを行います。重量は10RMの60kg、3セットすべて10回挙げることがセットクリア条件になります。

「3セット10回挙げる」といったセットクリア条件の場合、原則として1セット目が10回以上挙がりそうでも10回で抑え、残りのセットに余力を残すようにします。

注意点としては短いインターバルで10回→7回→4回といったように、挙がる回数が極端に減らないようにすることです。10回→8回→7回が10回→9回→8回になり、そのうちに3セットすべて10回挙がるようになるはずです。こうなればセットクリアということで次回から重量を上げ、同様に3セットすべて10回挙げることを目標にセットを組みます。

また、別のセットクリア条件として、1セット目が11回(もしくは12回)あるというセットの組み方もあります。どちらのセットの組み方でも基本的なトレーニングと同様で、間違っても目標とする回数が挙がらないからといってフォースト・レップスを行ったりしません。

なお、STEP1の期間であれば通常は少しずつ記録が伸びてくることになりますが、常に伸び続けるわけではないため、別項で紹介する『やり直し』という期間を設け、重量に変化をつけてトレーニングを続けていくこととなります。

■頻度:基本は週に2回、できれば3回
以上の様なトレーニングを週に何回行うか?となると、基本的には少なくても週に2回、できれば3回は行いたいところです。初心者の段階である程度の頻度で、トレーニングを行うことは、ベンチプレスに慣れる機会を増やすため、力を出し切れていない分だけ、回復が早いということからです。

なお、MAX挑戦に関しては毎回のトレーニングで行う必要は特にありません。週に3回トレーニングを行ったとしても、そのうちの1回をMAX挑戦の日にし、他の日はMAX挑戦を行わずにメインセットからトレーニングを開始します。

例えば、月・水・金曜日にトレーニングを行うとすると、月曜日=MAX挑戦とメインセット、水曜日=メインセット、金曜日=メインセット。以上のような形で、MAX挑戦を行っていきます。

■STEP1のトレーニングを行う期間:STEP1の目的を達成するまで
STEP1のトレーニングPを行う期間は、STEP1の目的であるベンチプレスに慣れること、つまり「フォームの安定」、「力を出し切ること」ができるようになるまでです。 これは人によりますが、最低でも「3ヶ月程度」、またSTEP1の目的が達成できたとしても「記録が伸びている限り」は同様のトレーニングを続けるこことなります。

どれだけ記録が伸びてくるかはその人の根本的な筋力や骨格、これまでのスポーツ暦などにもより、60kgで止まる人もいれば100kg以上挙げる人もいます。60kgで止まった人からすれば、同じ内容で100kg以上挙げた人を見て、「自分には才能が無いのか」と思うかもしれません。

しかし、勘違いしないで欲しいのが、この段階は「自分がどれだけの地力を持っているか?」ということを知るための期間でしかないということです。STEP2が本当の意味でのスタートだとすれば、STEP1は自身のスタートラインを知るためのトレーニングにすぎません。

たとえ、スタートラインが人よりも多少後ろだったとしても、トレーニングを継続することでいくらでも抜かせるチャンスはあります。

■STEP1での注意点:ベンチプレス用のストリクトな挙げ方で
まず、フォームと挙げ方での注意点ですが、挙上途中で尻が浮くようなことがないようにし、挙げる際に胸でバウンドさせないようにします。この期間にチーティング的なことを体が覚えてしまうと、後に矯正するのが難しくなってくるためです。

挙げ方としては、基本的なトレーニングと同様にネガティブを意識してゆっくり下ろすようなことはせず、下ろす位置や軌道が安定する程度のスピードで下ろし、胸にパーが触れたら一気に押し挙げるようにします。また、当然のことですが、必ず胸に付くまでバーを下ろします。

トレーナーの指導を受けていないような人だと、胸に付くまでバーを下ろさない人もいるようですが、言ってみればこれはベンチプレスではなく、「ベンチプレスらしきもの」でしかありません。恥をかくこともありますので、間違ってもこういった方法で、挙げた重量で「俺は何キロ挙がる」と言わないようにしましょう。

中には普段得られないような刺激を筋肉に与えるということで、胸まで下ろさない方法を行っている人もいると思います。確かにこういった方法は、プラトーを脱出するために有効なのですが、このような方法は初心者の段階であるSTEP1で行う必要はありません。

■フォースト・レップスを行わない
セットを組む際の注意点ですが、目標とする回数が挙がらないからといって、フォースト・レップスで無理やり挙げるようなことは絶対にしません。フィットネスクラブなどでは、フォースト・レップスを行うことが一般化されていますが、パワーリフターやベンチプレッサーは余程のことがなければ、フォースト・レップスは行いません。

普段からフォースト・レップスを行っているような人であれば、「力の出し方を覚え、力を出し切れるようにするにはフォースト・レップスは有効なのでは?」と思うかもしれません。しかし、自身だけで力を出し切るのと、他人の力を借りて出し切ったつもりになるのとでは、全く話が違います。

■あらかじめ決めたトレーニングを一定期間継続して行う
トレーニングを行っていくうえでの注意点で最も重要なのが、あらかじめ自分の行うトレーニングの内容を決めておき、それを定期間継続して行うということです。継続して記録を伸ばすためには基本的には4〜10週程度のサイクルでトレーニングを行っていきますが、STEP1では話が変わってきます。

STEP1では記録を伸ばすことよりも、ベンチプレスに慣れるという目的が最優先となり、STEP1での短い期間の場合だと、ほぼ同一のメニューを継続して行うことになります。(後に紹介するやり直しの期間を除く)

「トレーニング内容に変化をつけないと体が慣れてしまい記録が伸びなくなる」という意見を鵜呑みにして、トレーニング内容をころころと変える初心者もいるようですが、そういったことは同じトレーニングを継続し、なんらかの結果を得た後に行うことです。

また、「今日は調子が悪いから重量を軽くしてトレーニングをする」、「気分が乗らないから今日はトレーニングしない」といったようなことでは話になりません。同じトレーニングを継続して行い、継続するここの大切さを知っている人だけが、大きな結果を得ることができます。

■ベンチプレッサー的には:より高頻度、多セットで行う
児玉選手は、以上のようなトレーニング方法を、STEP1のトレーニングとしてベンチプレスをはじめたばかりの人に指導しています。また、ある程度ベンチプレスをかじっているものの、正しいトレーニング方法を知らなかったため記録が伸ばせなかった人に対しでも、はじめからやり直してもらうという意味で、同様の内容で指導しています。

ただし、「何が何でもベンチプレスが強くなりたい」という人を指導する場合は少し方法が変わり、この方法は単純に頻度とセット数を増やす方法となります。

基本的にSTEP1でのトレーニングの頻度は週に2回〜3回ですが、それに対して「何が何でもベンチプレスが強くなリたい」というベンチプレッサー的な考えであれば、最低でも週に4回、できれば5回以上行いたいところです。

例えば、5回行う場合であれば、3日トレーニングを行い1日休み、2日トレーニングを行い1日休むという「エブリベンチ」と呼ばれる形をとります。この場合であれば、オフ後のトレーニング時はMAX挑戦を重視し、他の日はメインセットでの地力アップを重視します。セット数も3セットだけでなく、最低でも5セット、多い場合は10セットほど行います。

「週に5回もトレーニングを行い、しかもそんなにセット数を重ねて回復が追いつくのか?そう思うでしょう。確かに、ある程度の重量を扱うようになってから、高頻度・多セットでトレーニングを行おうとすると、うまく行えないことが多く、うまく行うためには導入の際に工夫が必要になってきます。

しかし、この時期であれば比較的に簡単に高頻度・多セットでトレーニングを行っても疲労の残らない体を作ることができます。

「なんでも多くやればいいってもんじゃないだろう」と思う人もいるでしょうが、海外の選手やディスエイブルのトップ選手は、高頻度でトレーニングを行い、結果を残している人も多くいます。

ボディビル的な少ないセットで追い込み、超回復のためしっかりと休むというトレーニング方法は間違いないのかもしれません。しかし、それをそっくりそのままベンチプレスにあてはめてしまうのはどうかと思います。

本当に強くなりたいのであれば、常識や常識と思われていること。こういったことを平気でやぶってしまうことも、時には必要なのではないでしょうか。
 
  • ベンチプレス 基礎から実践 ベンチプレスが誰よりも強くなる(VOL.1)
    平成23年9月1日初版1刷発行
    著者:東坂康司
    監修人:児玉大紀
    発行人:橋本雄一
    発行所:(株)体育とスポーツ出版社


[ ベンチプレス 基礎から実践 ベンチプレスが誰よりも強くなる(VOL.1) ]

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