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心を鍛えるために身体を鍛える/武田真治 スペシャルインタビュー (2/2)

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掲載日:2015.06.05


縄跳びは、今の運動レベルや心体の状態・バランスを如実に知ることができるでしょう。イライラしていても跳べないし、のんびりしすぎていても跳べない。心と体の距離(イメージと実際の能力の差)を知ることができると思っています。都会で判断力だけが必要な仕事をしていると、肉体に比べて気ばかりが強くなりがち。華奢なくせに生意気で気だけが強かったかつての僕もそのタイプの人間だったので、最初は10回程度しか連続して跳べず、すぐに引っかかっていました。

20年くらい前、痩せこけた感じが「フェミニンでかっこいい!」と持てはやされ、スキニーな洋服を着てメディアに出ていた僕。そのキャラクターでいることが僕のウリになっていたことは自分でわかっていたので、多忙を極める中、四六時中気を張っていました。だけど、それこそ痩せ我慢を演じ重ねながら芸能界で生きているうちに、顎関節症になり、気持ちまでもがポキッと折れてしまって。「僕は何の価値もない人間だ」とまで考えるようになってしまったんです。

そんな時、治療を受けていた鍼灸師さんから「硬直してしまった全身の筋肉を目覚めさせましょう」と勧められたのが縄跳びでした。それまで運動をしていなかった人間が急にジョギングをやると、歩道と車道の僅かな段差や信号、対向してくる人といった外から来る情報に対処できず、思わぬ事故のもとになるといいます。それに、歩くより体重の2〜3倍の負荷が足にかかるため、すぐにひざを痛めてしまい、習慣になる前に運動自体を嫌いになってしまいかねません。だからまずは縄跳びを100回跳べるように、と言われたのです。





ランニングは〝究極の無駄〟。そんなに急ぐ用事があったら電車や車に乗れば良いわけですから(笑)。でも、無駄なものこそ美しいのは世の常。それほど必要のないことに立ち向かうことで見えてくる物事の本質ってありますから。

それにランニングには僕にとって心の浄化作用があるようで、すごくリフレッシュさせてくれます。細かいこととか、どうでも良くなっちゃいますよ。ランニングでしか手に入らない肉体のフォルムってありますよね。お尻が上がるとか、肺が膨らんで、胸郭が広がることで胸板の厚さが増すとか。

それに、ちょっとカッコつけたことを言わせて頂くと「(人生の)先が見えない中でも走れる男」でいたいというのもあります。僕はアスリートではありませんが、「チャンスは準備が整ったところに訪れる」と思っているからです。自分が望んでいた夢や目標が突如目の前に来た時に、まだ納得のいく準備ができず手を伸ばすことさえできなかった、なんてこと誰れもが経験ありますよね?僕は走ることで「結果無駄かもしれないこと」に立ち向かう強さを心と体につけて、どんな要求にも答えられるようにして、自分の人生や運命を精一杯迎えに行きたいんです。

ランニングって、もしかしたら運動の中で一番ハードルが高いと感じる人もいるかもしれません。そんな時は〝肉体的限界は精神的限界のはるか先にある〟と思ってみて下さい。精神的限界をどんどん遠くに設定できるようになると人生のいろんなことがけっこう楽になっていき、世界がぐんと広がるはずです。





未経験者にとって、ベンチプレスほど無駄で一人よがりなことってないんでしょうね。仰向けになって力を入れることって、日常生活では、まずありえないし、それで身につけた力は一体いつ、どこで必要なんだ?って。でも、人生の意義ってなんだろう、と考えてみると、どうしたって絶対的な正解なんてなくて、だとしたら「無駄かも知れないことに挑み続けること」しかなくなると思うんですね。 ある人が言いました。「無駄なことにしか感動はない」と。目からウロコが落ちました。

ベンチプレスなどの自分の体重以上の負荷をかけるトレーニングは、よりダイレクトに〝現実〟を感じることができるでしょう。ベンチプレスで身体に込める力、ベンチプレスをする時のフォーム、バーベルを押し上げて「さあ、これから胸に向けておろしていくぞ!」という時に、奥歯と奥歯をかみ合わせることで入るスイッチ。そこから全身にアドレナリンを巡らせる感じを身につけられたら、ベンチプレスに限らず、あらゆる状態で力が発揮できるようになるとも聞いたことがあります。力を出す時に必要なエネルギーの源そのものを鍛錬できると。

ベンチプレスを1日のどのタイミングでやるか、というのは、最初のころはなかなか決まらないものです。1日じゅう時間があっても、気が重くてなかなか腰が上がらず、深夜なってようやく取りかかったこと僕もありました。今はベンチプレスセットが自宅にあるので、なるべく朝、出掛ける前にするようにしています。 ベンチプレスは顔が上を向いているし、いったん動作に入ったらバーベルがどんどん自分に迫ってくるので、やらないわけにはいかなくなり、そうなればおのずとスイッチが入って、途中でやめるのも悔しいので、10回連続で挙げちゃおうって思うはずです。なのでベンチプレスを習慣付けるコツは、とりあえずベンチ台に寝てみることですね(笑)。





腕立て伏せは正直普段はあまりやっていません。まず、床が顔に迫ってくるという切迫感があるし、僕は体重が軽いこともあって、あんまり身体に効いてこないので回数が必要で、そうなると息ばかりが上がる感じで、日々ベンチプレスをやっている身としてはズッシリ感が物足りないというか。

でも舞台などの地方公演の時には共演者やマネージャー、スタッフさんなんかを巻き込んでやりますね。それに、そういう健全な学生ノリって、周りにいい感じのバイブスを与えるのか、みんなが笑顔になったりするし、女性社員のかたたちもその空気感、嫌いじゃないはずですよ。運動ができる環境って、自分で作るものなのかも知れませんね。

僕と同年代の方々はいわゆる働き盛りで、なかなかジムに通う時間を確保できないこともあると思うので、ちょっとしたスペースを見つけての腕立てはオススメです。





優雅な肉体が最高の復讐である。(幻冬舎)
トレーニングを生活習慣にするには、自分自身で失敗しながら学んだやり方でしか身につかないもの。武田氏がそれを諦めずに見つけてきたみずからの経験を記した『優雅な肉体が最高の復讐である。』が、このたび上梓された。

トレーニングの具体的なハウツーはあえて最小限、武田氏自身が日々のトレーニングで支えられてきた言葉や経験を挙げることで、「これまでトレーニングに挑戦しても三日坊主で終わっていた人が、四日目に読んだ時に『よし、もう一度やろう』と思えるように」という思いを込めて書き上げたこの一冊は、すでにトレーニングに親しんでいる人がページを繰ってもモチベーションの上がるものになっている。多くの人にとって〝心のトレーニングバイブル〟となることだろう。


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  • 武田 真治(Takeda Shinji)
    出身地 : 北海道
    生年月日 : 1972年12月18日
    サイズ : T165 B90 W66 H80 S26
    血液型 : AB型
    デビュー年 : 1990年

Photo:
Akasaka Tomohiro
Text:
Akane
スタイリスト:
伊藤伸哉
ヘアメイク:
堀江万智子
衣装協力 :
CHORD NUMBER EIGHT
取材協力:
ジョンソンヘルステックジャパン
フィットネス&ボディメイク情報誌
[ PHYSIQUE MAGAZINE 003 ]

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